高級リゾートホテルを誘致すれば訪日客はもっとお金を使うのか。インバウンド消費はそれほど強いのか

AI要約

日本政府観光局(JNTO)が6月の訪日外国人旅行者数が過去最高を更新し、上半期の訪日客数も前年を大幅に上回ったことが明らかになった。

政府は観光立国の実現に向けて、訪日客数だけでなく消費額の引き上げも重要視しており、2025年までに目標達成を目指している。

最新の数字からは、消費単価や宿泊数が増加傾向にある一方、訪日客数と消費額の両方が順調に推移していることが示されている。

高級リゾートホテルを誘致すれば訪日客はもっとお金を使うのか。インバウンド消費はそれほど強いのか

日本政府観光局(JNTO)が7月中旬に発表した6月の訪日外国人旅行者(インバウンド)数は313万5600人と4カ月連続で300万人の大台を超えた。

上半期(1~6月)の合計は1777万7200人。パンデミック直前の2019年に記録した過去最高の1663万3614人を大幅に更新した。2023年との比較でも66%増えた。

上半期について国・地域別の内訳を見ると、韓国、中国、台湾、アメリカの順に多く、アジアの近隣国が引き続き上位を占めたものの、円安を追い風に欧米諸国からの増加も目立ち始めている。

下の【図表1】を見ると分かるように、ここまで上半期を通じて過去最高を記録した2019年の数字を下回った月は一度もなく、通年でも過去最高の3188万人2049人を上回ることがほぼ確実視される。

政府が2016年の「明日の日本を支える観光ビジョン」で掲げた「2020年に4000万人、2030年に6000万人」の目標はパンデミックを挟んで達成が遅れているが、この勢いを持続できれば、2025年中に前者は実現できるかもしれない。

政府が「日本の力強い経済を取り戻すために極めて重要」と位置付ける観光立国の実現に向けては、訪日客数だけでなく消費額の引き上げも不可欠だ。

2023年3月末に閣議決定された観光立国基本計画(第四次)では、訪日外国人旅行者数などの「数量」に関する以前からの指標に加え、訪日外国人旅行消費単価(以下、消費単価)や訪日外国人旅行者1人当たり地方部宿泊数(以下、宿泊数)といった、いわば旅行の「質」に関する指標が導入された。

まず、消費単価については、2019年実績の15.9万円を2025年に20万円、2030年に25万円にする目標を上記計画で掲げた。その後判明した2023年の実績は21.3万円と、2025年目標を前倒しで達成している。

一方、地方部宿泊数については、2019年実績の1.4泊を2025年に2泊にする目標を掲げたものの、最新の2023年実績は1.27泊とパンデミック前の水準を回復できておらず、2025年に2泊に達するかは微妙な情勢だ。

ごく直近の数字を確認しておくと、第2四半期(4~6月期)の訪日外国人旅行消費額は2019年同期比68.6%増の2兆1370億円、四半期として過去最高を記録。消費単価は23.9万円となり、2030年目標の25万円達成が(前倒しされる可能性も含めて)現実味を帯びてきた。

冒頭で見たように上半期の訪日客数は2019年比で6.9%増ながら、消費額は61.5%も増えている(2019年は上半期2兆4190億円、2024年は同3兆9070億円)。

岸田首相は7月中旬に開催した観光立国推進閣僚会議で「2024年は過去最高を大きく更新して3500万人、旅行消費額も8兆円が視野に入る勢い」(日本経済新聞、7月19日付)と語っている。

この8兆円という数字は、2025年目標に基づいて、4000万人の訪日旅行客が消費単価20万円を支払う計算から出てきたものだろう。

しかし、上で述べたように、最近は「質」を示す指標である消費単価の伸びが「量」を示す客数のそれを上回り、結果として数字の辻褄(つじつま)が合う形になっている。

岸田首相は同じ閣僚会議の席で、全国35カ所の国立公園に高級リゾートホテルを誘致する方針を打ち上げて大きな話題を呼んだが、それも「質」重視の戦略を象徴する一手と言える。