「伝統的な街並みが残っているから」だけではない…岐阜を訪れるイスラエル人観光客がどんどん増えているワケ

AI要約

上高地は、飛騨山脈の南部、長野県側にある景勝地で、毎年多くの観光客が訪れる。「河童橋」はそのランドマークであり、芥川龍之介の小説『河童』でも知られている。

飛騨高山は、岐阜県北部に位置し、昔ながらの木造建築や伝統的な商家の街並みが残る観光地。外国人観光客が多く訪れ、イスラエル人も増加している。

岐阜県は杉原千畝ゆかりの地であり、イスラエル人観光客が増加している。飛騨高山では、彼らにとって魅力的な観光スポットが多く存在する。

外国人観光客は日本のどこを訪れているのか。東大カルペ・ディエムによる『外国人しか知らない日本の観光名所』(星海社新書)より、第3章「中部地方の知られざる観光名所」の一部を紹介する――。(第2回)

■芥川龍之介の小説にも登場する橋

 上高地は、飛騨山脈の南部、長野県側にある景勝地です。中部山岳国立公園の一部として、国の特別名勝、特別天然記念物に指定されています。その美しさはこの世のものとは思えないほどで、山奥にあるにもかかわらず毎年120万人以上の観光客が訪れることからもその人気がうかがい知れます。

 この上高地のランドマーク的存在が「河童橋」です。大正池と明神池の中間ほどに位置し、梓川の両岸をつないでいるこの橋は、芥川龍之介の小説『河童』に登場することでも有名です。

 橋上からは穂高連峰や焼岳を望むことができ、季節によっていろいろな色に染まる山々を一望できます。特に夏の新緑や秋の紅葉などの時期は大勢の人々が押しかけ、「上高地銀座」と呼ばれるほどです。

 人気の理由

 日本特有の動植物も多く見られる上高地は、世界中の自然愛好家にとって見逃せないスポットになっています。

 加えて上高地の雄大な自然の原風景と、そこにかかった一本の木造建築のつり橋が調和した風景に、特に日本らしさを感じる外国人観光客が多く、自然だけでなく日本らしさに出会える景勝地として人気です。そしてこの河童橋自体がフォトスポットでもあり、美しい自然を写真に収めるためにぴったりなロケーションでもあるのです。

 近くには土産物屋やレストランも位置しており、登山中に少し休憩したくなったときの場所としても活用されています。

 注目ポイント

 日中の絶景もさることながら、夜になると空を覆いつくすほどの満天の星を望むことができるので、これを目当てに海外からやってくる観光客の方もいらっしゃるようです。

■岐阜にイスラエル人が訪れるワケ

 一般に「飛騨高山」と呼ばれる地域は、岐阜県北部(飛騨地方)の高山市にあたります。高山市には昔ながらの木造建築が立ち並び、伝統的な商家の街並みが保存されています。老舗の商店、蔵元、温泉宿など、まるで京都の一角に来たかのような趣のある建物が見られます。

 これらの商家町の歴史は江戸時代にまで遡ります。当時は木材資源が豊富であり、優れた木工職人も多数いました。現在でも彼らの作品は、立ち並ぶ木造建築や、町の随所に見られる木彫りの彫刻や装飾として残っています。

 人気の理由

 外国でもよく知られた古くからの日本の伝統文化を味わえるとあって、飛騨高山は外国人がたくさん訪れる観光地となっています。そして、多言語で書かれた散策マップや標識が充実しているのも人気を後押ししています。

 意外な点としては、近年の飛騨高山ではイスラエルからの外国人観光客が増えているそうです。これにはイスラエルの経済力が上がったことや、イスラエルから日本へのアクセスが便利になったことなど複数の要因が関わっているようですが、岐阜県があの杉原千畝ゆかりの地であるということも大きいでしょう。

■3年で約7.6倍に増加

 杉原千畝は第二次世界大戦中にリトアニアの日本領事館領事代理を務め、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人に対して独断でビザを発行し、何千人ものユダヤ人の命を救った人物です。

 岐阜県八百津町には「杉原千畝記念館」があり、多くのイスラエル人がここを訪れています。そしてその際に彼らが訪れるのが、近隣の高山市や白川村なのです。

 岐阜県では「杉原千畝ルート」という名称でこれらの名所を巡る観光ルートを設定し、海外に積極的に発信しています。高山市におけるイスラエル人の宿泊者数は、2013年時点では約2800人でしたが、2016年には1万人以上にまで増加しています。

 注目ポイント

 飛騨高山は街並みを散策するだけでもワクワクする、日本人にも人気の観光地です。

 今ではすっかり見なくなった木造建築の建物が、往年の雰囲気を残したまま整然と並んでいます。

 朝に早起きして朝市に行けば新鮮な果物や野菜、地元の伝統工芸品などが買えますし、蔵元に行けば多種多様な日本酒が試飲できます。また山車が練り歩く高山祭も魅力の一つで、これも江戸時代にまで遡る長い歴史を持っています。疲れたら昔ながらの温泉宿でほっと一息つけます。

 このような「イメージしていた日本」をそのまま享受できるのが、飛騨高山が愛される理由でしょう。