キーエンス、ファナックなど優れた「シン・日本企業」に共通する7つの「P」とは?

AI要約

日本の経済が低迷する中、2000年代初めに高収益を上げた企業を分析。40社の収益性の高さを調査し、驚きの結果が得られる。

キーエンスやファナックなど幅広い業種の企業が上位にランクイン。知名度の高い企業とあまり知られていない企業の両方が含まれていた。

企業間に共通点は見当たらず、会計データだけでは収益性を説明できない。従業員数や売上高などの要因が一様ではなかった。

 今や「衰退するかつての先進国」と語られる日本。「失われた30年」を経て、少子高齢化、政府の債務、賃金水準の低迷といった厳しい現実に直面している。とはいえ、人口が世界12位なのにGDPは世界4位の経済大国だ。ということは、日本には独自のビジネスの強みがあるに違いない――。本連載では、一橋大学経済研究所や日本銀行、経済産業省、財務省で研究員・客員教授を歴任したウリケ・シェーデ氏(現・カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院教授)の著書『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』(ウリケ・シェーデ著、渡部典子訳/日経BP日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。「変貌を遂げ再浮上する日本」にスポットを当て、その立役者である成功企業の強みを分析し、学びを得る。

 第1回は、2000年代初め、日本経済が低迷していた時期に高収益を上げた企業を分析し、見えてきた7つの共通点を解説する。

■ 研究デザイン――2000年代前半の高収益企業

 2000年代初め、日本経済は低迷していたにもかかわらず、金融危機以後、絶好調な企業があることに私は気づいた。このようなスーパー先頭ランナーを調べるため、日経NEEDSで2000~2009年度の日本の全上場企業(金融機関を除く)の財務データを取得し、営業利益率で収益性を測定し、企業ランキングを作成した。

 サンプル数は毎年異なり、10年間の平均は2147社にのぼる。このうち約半数が製造業(10年間の平均は1107社)である。

 下の図は、2000~2009年度に収益性の高かった製造業40社と、その平均営業利益率、およびその標準偏差を示したものだ。標準偏差が低いほど、10年間の業績変動が少ないことを意味する。ここでは、結果を比較しやすくするため、製造業のみを対象とした(ただし、製薬会社は製造コストよりも研究開発費を重視するビジネスモデルの性質上、営業利益率が通常より高くなる傾向があるので、この表から外した)。

 1位のキーエンス(センサー)と2位のファナック(ロボット/FA)がこの期間中、日本で最も収益性の高い企業となった。全体では、業種はFA、エレクトロニクス、自動車部品、先端化学品まで多岐にわたる。2007年にアップルのiPhoneが発売されたが、その中核サプライヤーの多くはやはり日本企業であり、ヒロセ電機、ユニオンツール、コーセルなどが名を連ねた。

 おそらく驚きなのが、任天堂(2006年にゲーム機「Wii」が大ヒットした)、シマノ、キヤノンなど知名度の高い企業も含まれるものの、大多数は日本人の間でもあまり知られていない企業であることだろう。業種が幅広いことに加えて、一見すると、少なくとも標準的な決算書を見るかぎり、ほとんど共通点は見当たらない。

 たとえば、いずれも上場しているが、従業員数は500人程度の企業もあれば、数千人の企業もある。売上高は750億1兆5000億円と大きい企業が多い。輸出比率は非常に高かったり、それほどでもなかったりする。株式の海外投資家の株式保有比率は7%から50%超まで幅がある。このように、一般的な会計のモノサシでは、なぜこれほど収益性が高いのかを説明できるパターンを見いだせなかった。