「自分のやりたいことは二の次」生き抜くために、役立つ資格を追い求めるZ世代の盲点

AI要約

「役に立つ資格って何ですか?」と聞く学生に対して、舟津氏は社会が設定した欲望との関連性に言及し、若者の発想の欠如を指摘する。

三宅氏は、高校生までの教育が「親の言うことを聞きなさい」という論理に基づいていることから、若者が自らのやりたいことを見つける難しさを指摘する。

さらに、社会が求めるものは変化するため、ただ社会の求めに応じて行動するだけでは将来において求められなくなる可能性があるという警鐘を鳴らす。

「自分のやりたいことは二の次」生き抜くために、役立つ資格を追い求めるZ世代の盲点

若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。

企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――例えば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。

本記事では、前回に続いて、著者の舟津昌平氏と文芸評論家の三宅香帆氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。

■「役に立つ資格って何ですか?」と聞く学生

 舟津:学生から最もよく聞かれる質問の一つが「役に立つ資格って何ですか」というものです。私の考えでは、何かやりたいことがあって、そのために資格が必要だから取る、という発想が自然だと思います。もちろんそう考える学生もいる中で、「役に立つ資格は何か」という質問には、その発想が欠けているように感じます。

鳥羽和久さんと対談した際、鳥羽さんが「社会が設定した欲望」という表現を用いられました。「役に立つ資格を取る」というのは、その人がやりたいものではなく「そうしないといけない」と社会が設定したものなのであると。学生にそういうことを言うのはまず親御さんだろうし、大学も加担している。でも、若者側にも「本当にそうしないといけないの?」という疑問があってもいいと思うんです。

 三宅:そうですね。本書で「いい子症候群」について触れていますが、基本的に高校生までは「親の言うことを聞きなさい」とか、「迷惑かけないように生きなさい」という論理の中で生きています。だから、大学生になって初めて「やりたいことをやれ」と言われても、「やりたいことじゃなくて、求められることをやりたい」という感覚になるのは仕方ないかなとも思ったりします。

 三宅:でも、社会が求めるものって変わってしまうものなんですよね。今はAI産業が脚光を浴びていますが、10年後、20年後にはどの業界が注目されているかわかりません。結局、社会の求めに応じて動いていたら、求められなくなることもあるのではないのかと、私は思っています。