国内EVバス商戦は日中韓の三つどもえに 現代自が参入、先行BYDに対抗へ

AI要約

韓国現代自動車の日本法人が日本市場に電気自動車(EV)の中型バスを導入することを発表。国内商用車メーカーも参入し、EVバス市場が活気付いている。

現代自は日本展開の第1弾として観光・交通事業向けに中型EVバスを導入。中国メーカーより品質が高いとして売り込む。

日本バス協会がEVバス導入目標を掲げ、国も補助金を提供。国産EVバスも増加し、市場は競争激化する見通し。

韓国の現代自動車の日本法人は23日、電気自動車(EV)の中型バスの販売を年末から開始し、日本のEVバス市場に参入すると発表した。日本でのEVバスの展開では中国EV大手の比亜迪(BYD)が先行しているが、国内商用車大手のいすゞ自動車も5月から年間150台の販売を目標に商品を投入しており、国内路線バスのEV化は日中韓の三つどもえの戦いに突入する様相だ。

現代自はEVバスの日本展開の第1弾として、鹿児島県で観光・交通事業を手掛ける岩崎産業の屋久島でのバス運行向けに乗車定員55人の中型モデル「エレクシティタウン」5台を受注した。同社の岩崎芳太郎社長は韓国製EVバスの導入理由について、ニーズに合う国産車がなく「中国メーカーより品質が良い」と説明。現代自日本法人の趙源祥社長も韓国で約6千台の販売実績があり、「品質に自信がある」と強調した。

エレクシティタウンは航続距離が200キロ以上で、ドライバー異常時対応システムなどの安全装置を標準装備した。価格は4700万~5千万円程度。来年は50台以上の販売を目指す。

EVバスを巡っては、事業者団体の日本バス協会が令和12年までに1万台の導入目標を掲げ、国もEVバスとディーゼルエンジンバスの差額の3分の2を基本に導入費を補助する助成事業で普及を支援している。

市場では国内商用車大手の商品投入が遅れたこともあり、平成27年に日本でのEVバス販売に乗り出したBYDが需要開拓で先行。同社日本法人によると累計販売台数は300台以上に上り、約8割のシェアを獲得しているという。

ただ、いすゞが、床に段差がなく高齢者などが乗りやすいフルフラット設計を国内路線バスで初めて実現した大型EVバス「エルガEV」を商品化。5月に発売した都市部向けモデルに続き、年内にも地方向けモデルを投入する見通しで国産EVの選択肢も増える。

車両価格では中国製に割安感があるが、国や自治体の補助金の活用で国産や韓国製も導入負担はディーゼルバス並みに抑えられるとみられ、BYDの独走の構図は崩れる可能性がある。

国は令和5年度補正予算で商用車の電動化促進に約409億円を計上。当初予算の約136億円から大幅に上積みして助成事業を強化しており、日中韓大手の今後の競い合いは国内路線バスの脱炭素化の加速につながることも期待される。(池田昇)