高価なはずのうな丼、衝撃の「590円」…「宇奈とと」があれほどまでに安いワケ

AI要約

鰻専門チェーン店が急増する中、低価格で高品質な鰻を提供する理由について解説。

消費者の価値観の変化や冷凍技術の向上が手ごろな価格の鰻を支えている。

記事後編では、日本のうな丼が世界から注目を浴びる理由について紹介。

高価なはずのうな丼、衝撃の「590円」…「宇奈とと」があれほどまでに安いワケ

今年の土用の丑の日は7月24日と8月5日。土用の丑の日といえば、鰻を連想する人も多いだろう。

いまや高級食材のイメージが強い鰻だが、安価に食べられる鰻専門のチェーン店が急増しているのをご存じだろうか。

「安い・早い・旨い」をモットーにこれまでの鰻のイメージを覆し、「うな丼」を590円という衝撃価格で提供する「名代宇奈とと」は、国内外合わせて約100店舗を展開している。また「うな重(半身)」を1600円というリーズナブルな価格で楽しめる「鰻の成瀬」は、ブランド開始から2年弱で国内外150店舗を超え、急速に拡大しているのだ。

こうした鰻専門チェーン店では、店内で焼き上げ、外は香ばしく、中はふっくらとした食感を実現し、安価にもかかわらず高クオリティな鰻を提供しているのが特徴。オリジナルのたれや鰻に合わせた米の品種にまでこだわり、そのコスパの高さから消費者の満足度は非常に高いという。

低価格を実現できる理由の一つは産地だ。

そもそも鰻は国産の二ホンウナギ、海外で養殖された外国産の二ホンウナギ、その他の種類の食用鰻に分類される。

「ニホンウナギ」という品種の名前から国産をイメージしがちだが、外国から輸入されているものも多いというのがポイント。「名代宇奈とと」や「鰻の成瀬」で提供されている二ホンウナギは外国産で、海外で厳選された養鰻場で大量に生産していることでコストを抑えているのである。

こういった背景を踏まえ、現在のように手ごろに鰻を楽しめるようになった理由や鰻専門チェーン拡大の理由などについて、フードアナリストの重盛高雄氏に話を伺った。

これまで高級なイメージの強かった鰻だが、手ごろさを増した背景にはどんな変化があるのだろうか。

「まずは鰻の素材自体のクオリティが高まったことが挙げられます。これには一昔前に比べ、消費者の意識が『量より質』に変化したことが関係しています。外食するなら多少高くても美味しいものや、質のいい食材を求める人が増えたことによって、生産者側の意識も変化し、鰻の品質向上に力を注ぐようになったのです。こうして消費者の価値観の変化によって鰻の需要が高まったことで、海外の養殖場含め鰻の生産に力を入れる地域が増えてきました」

なるほど、消費者が「質の高さ」を求めるようになってきたことで、おのずと高級食材だった鰻の需要も高まり、その結果、参入する業者が増えて品質も向上したという経緯か。

ほかにも手ごろになった背景には「冷凍技術の向上」もあるという。

「コロナ禍を経てデリバリー需要やテイクアウト需要が増えたことによって、出来たてでなくとも美味しく食べることができるような技術の向上が求められるようになりました。その時代が求めた需要によって近年は冷凍技術が急速に向上し、もともとの食材のクオリティを保ちつつ、安定供給が可能になったことで手ごろに食べられるようになったのです。たとえば牛丼チェーン店などで提供されるレトルトの鰻といえば、以前は焼き上がりのふっくらさや風味をなかなか感じることができませんでしたが、現在では冷凍技術の向上によって焼き立てに近いクオリティを維持できるようになったんです」

牛丼チェーン店で提供される鰻は、冷凍したものを電子レンジやボイルなどで解凍するだけで、店内で焼き上げるという調理工程を省いていることが多いようだが、冷凍技術の向上によって美味しさも向上しているとのことだ。

記事後編は「いま『日本のうな丼』が世界から注目を浴びている…『安くておトク』なイメージへと激変」から。