悪路に強いレクサスの「ミッドサイズSUV」オンロードでの印象は? 新型「NXオーバートレイル」は“味磨き活動”の成果を実感できる良品です

AI要約

新型「NXオーバートレイル」は、アウトドアスタイルを体現した新グレードで、オフロード性能が向上している。オンロード走行でも優れた応答性と乗り心地を実感。

レクサスが「NX」のボディ剛性を2回目に改良。今回の改良で剛性の向上に成功し、ハイレベルな走りを実現。

レクサスの「味磨き活動」が各モデルの走り味を統一化。剛性の連続性やバランスを整え、統一された乗り味を提供。

悪路に強いレクサスの「ミッドサイズSUV」オンロードでの印象は? 新型「NXオーバートレイル」は“味磨き活動”の成果を実感できる良品です

 先の商品改良でレクサス「NX」に追加設定された新グレード「オーバートレイル(OVERTRAIL)」に試乗しました。

 新型「NXオーバートレイル」は、レクサスが現在推進し、大自然と共生しながらアウトドア・ライフスタイルを彩るクルマの楽しさと、さまざまな体験を提供する“オーバートレイル・プロジェクト(OVERTRAIL PROJECT)”を体現した1台です。

 アウトドアスタイルをイメージした内外装に加えて、最低地上高を15mm引き上げた専用サスペンションや18インチのオールテレインタイヤの採用、さらにはAWD制御に「トレイル」モードを設定するなど、オフロードでの走破性が引き上げられています。

 そんな悪路志向の新型「NXオーバートレイル」ですが、残念なことに今回の試乗ステージはオンロードのみ。そのため筆者(山本シンヤ)は「オフロード志向の味つけなので、オンロードではよくいえば“おだやか”、悪くいえば“ダル”な走り味になっているだろう」と予想していたのですが、走らせてみてビックリさせられました。

 何しろ、ステアリングの切り始めからスッとクルマが動く応答性、よりなめらかな操舵感、アップした車高を感じさせない安定したコーナリング姿勢、オールテレインタイヤとは思えない接地感、そして、突き上げが抑えられた優しい乗り心地……と、むしろ従来モデルの通常仕様よりハイレベルな走りが実現されていたのです。

 ちなみに、改良後の通常仕様は試乗していないのですが、おそらく“もっといい”はずです。

 そうした印象を開発者に伝えると「ボディの剛性アップが効いています」との回答が返ってきました。

 実は、「NX」のボディ剛性アップが図られたのは今回が2回目です。

 1回目は2023年の商品改良時に実施され、フロントのラジエターサポート回りやリアサスペンションのメンバーブレース(「NX350」用だったものを全グレードに展開)が改良されました。そして今回は、リアのボディ変形を抑えるブレースが追加されています。

 ただ間違いなくいえるのは、今回の改良の方が明らかに“伸び代”が大きいということ。

 もう少し突っ込んで聞いてみると、「レクサスはこれまでも“体幹を鍛える”べくボディ剛性に注力していましたが、現在、レクサスがおこなっている“味磨き活動”の中で、『キモとなる部分が見えてきた』といった方がいいいかもしれません」と教えてくれました。

 レクサスが近年おこなっている“味磨き活動”では、各モデルのチーフエンジニアに加えて、各領域のリーダーが一堂に会し、開発中のさまざまな技術を持ち寄って“ワイガヤ”がおこなわれているそうです。

 おそらく、従来はチーフエンジニアの個性がクルマに反映されがちで、「個々のモデルとしてはいいけれど、ブランド全体で見たときはどうなのか?」といった悩みもあったと推測します。

 しかし今では、“味磨き活動”を通じてブランドに横串を刺すことで、レクサスとしての「目指す道が明確になる」というわけです。

 これまでも、レクサスの各モデルはTNGAプラットフォームをベースに、レーザースクリューウェルディングや構造用接着剤といった独自の“プラスα技術”を用いて体幹を鍛えてきました。

 しかし、手間や重量をかけた割には、効果があまり出ていないなと感じることがあったのも事実です。

 あるエンジニアは、「レクサスのとあるモデルと同クラスの欧州車でねじり剛性や着力点剛性を計測すると、レクサスの方が3倍以上高い値を示します。しかし、実際に乗り比べてみると、欧州車の方が明らかに剛性が高いなと感じます……。つまり我々は『何かが違う』、『何かが足りない』と理解しました」と教えてくれました。

 要するに、体幹を鍛えたはずの車体を活かし切れていなかったのです。

 そこで、従来とは異なる方法で計測してみると、足りない部分が見えてきたといいます。

 さらに、ライバルの車体を分析しながらさまざまなトライをおこなうと、フロント先端、リア後端、センタートンネル、バルクヘッド接合部の4箇所……つまり、結合部や変位の大きい部分を重点的に剛性アップすることで、走り味が大きく変わることが分かったのだといいます。

 これは筆者の想像になってしまいますが、これらの手当によって剛性バランス(剛性としなやかさ)や剛性の連続性(力がスムーズに伝達されること)が整ったことで、“立体”としての剛性が高まったのでしょう。

 これらをレクサスの全モデルに施し、“味磨き活動”のメンバーで試乗してみると、プラットフォームやレイアウト、駆動方式が異なるにも関わらず、これまで以上に統一された乗り味になることが分かったといいます。