ホンダの新型「フリード」で待望のHV、「ちょうどよさ」がさらに進化していた!【試乗記】

AI要約

ホンダ「フリード」が8年ぶりのフルモデルチェンジを果たし、幅広いユーザーから高い支持を受けている。

新型フリードは、介護用としても利用できる「CROSSTAR スロープ」や、ハイブリッド車とガソリン車を乗り比べるなど、さまざまなシチュエーションで「ちょうどよさ」を実感できる。

乗り心地の改善や技術的な進化が際立つ新型フリードは、ユーザーにさらなる満足をもたらすであろう。

ホンダの新型「フリード」で待望のHV、「ちょうどよさ」がさらに進化していた!【試乗記】

 子育て世代のヤングファミリーからシニアまで、幅広いユーザーから高い支持を集めているホンダ「フリード」が、8年ぶりのフルモデルチェンジとなった。待望のハイブリッド車(HV)とガソリン仕様とを乗り比べて、新型の魅力を探った。(ジャーナリスト 桃田健史)

● 試乗中、さまざまなシチュエーションで 実感した「ちょうどよさ」

 ホンダが6月29日から国内発売を始めた新型「フリード」の報道陣向け試乗会が、横浜で実施された。

 フリードは、コンパクトなミニバンというイメージで、グローバル市場ではMPV(マルチ・パーパス・ビークル)に属するクルマだ。

 グローバルといっても、新型の販売は香港とシンガポール向けだけで、生産するほとんどが日本向けとなる、「ほぼ日本市場専用車」といってよい。

 そんな新型フリードの商品コンセプトは、「”スマイル” ジャスト ライト ムーバー」。開発責任者の安積悟氏によれば、先代モデルで商品訴求した「家族の毎日にちょうどいいホンダ」と基本的には同じことだ。

 では、新型フリードは「どんなふうに、ちょうどいい」のか?

 また、新型では「ちょうどいいが、どんなふうに進化」したのか?

 そうした点にフォーカスしながら、三つのタイプに試乗してみた。

 まず乗ったのは、「CROSSTAR スロープ」。

 乗ったといっても運転はせず、3列目に固定された車椅子に乗った状態で、ホンダ社員が運転して市街地を走った。

● NVH(音・振動・突き上げ)の 改善を3列目から実感

 フリードには、新型ではベースとしての「AIR」と、アクティブなイメージの「CROSSTAR」の大きく2タイプあり、「CROSSTAR」は2列シートが基本で後部のスペースはアウトドアなど多様な用途に使うイメージだ。

 さらに、「CROSSTAR スロープ」では、リアハッチの開口部にスロープがあり、車椅子など介護用として、またはペットや各種道具などの搭載のしやすさを考慮している。

 以前、「N-BOX +(プラス)」というモデルでも、こうした試みがあった。先代フリードでは介護用という目的を強調し過ぎたことを反省してか、新型ではスロープという機能を強調する形に改めている。

 その上で、あえて車椅子に乗っての試乗となったのには、いくつかの理由がある。

 まず、家族のさまざまなライフステージに対応するという観点では、介護を身近なこととして捉える必要があることを実感するため。もう一つが、新型モデルでの技術的な改良点を3列目からチェックするためだ。

 実感として、車体とサスペンションの改良により、以前に乗った先代モデルと比べて明らかに、揺れと路面からの突き上げが少なくなったことが分かる。コンパクトなミニバンでは後席(2列目、3列目)の乗り心地は、商品価値を大きく左右する。

 また、3列目横のウインドーが大きくなったことに加えて、2列目のヘッドレスト形状を変更したことで、前方への見切りがよくなったことにより、3列目の狭さ感がかなり解消されている。運転者との会話も自然にできた。車内外の音があまり影響しないからだ。

 その他、天井部に設置された後席用エアコンの効きも良い。猛暑が当たり前になった日本ではありがたい存在だ。

 このように、「ちょうどよさ」が、しっかりと進化していることが直感的に分かる。

● あえてFFガソリン車と ハイブリッドAWDを比べた実感

 次に、ガソリン車とハイブリッド車を運転して乗り比べた。

 ただし、試乗会での時間的制約によって、新型フリードのすべてのグレードで比較することができなかった。

 試乗したのは、「CROSSTAR」のFF(前輪駆動車)ガソリン車(全国メーカー希望小売価格:281万2700円)と、「AIR」AWD(四輪駆動車)のハイブリッド車(HV、同:308万8800円)の2グレードだ。

 まず、「CROSSTAR」FFガソリン車だが、試乗前に想定していた軽快さは強く感じず、その代わりに見た目よりも少し大きなクルマに乗っているような雰囲気がある。

 パワーステアリングの設定も、ソフトタッチというより手応え感がしっかり出ている。

 これは後で乗った「AIR」AWDでも同様だが、視界の斜め前方にあるAピラーの位置とタイヤの位置がマッチしているために、市街地での取り回しがとても楽だ。

 また、1.5LエンジンとCVT(無段変速機)の制御を見直したことで、アクセルを多めに踏み込んだり減速時に強く戻したりした際のクルマ全体の動きが穏やかになった。

 首都高速では、先進的運転支援システム「ホンダセンシング」の改良度合いがちょうどよい。特に、車線逸脱防止装置(レーンキープアシスト)は、試乗前の想定よりしっかり利くイメージだが、制御の介入がナチュラルな感じだ。

 安積氏は「フリードのユーザーは、各種の技術的な詳細はあまり気にしないかもしれないが、結果的に乗りやすさを感じてもらいたい」と、各種の制御や設計での改良によって、「ちょうどよさ」をさらに引き上げるという開発者の意図を語った。