【死後の手続きカレンダー】四十九日後に本格化する相続の手続き 遺言書があれば検認、ない場合は遺産分割協議書を作成 不動産の名義変更も必須

AI要約

遺された側が直面する死後の手続きについて。遺言書の検認や相続放棄の申述書提出など、必要な一連の作業が紹介される。

円広志さんの体験を通じて、手続きが妻の死を受け入れていくために必要な作業であることが述べられる。

【死後の手続きカレンダー】四十九日後に本格化する相続の手続き 遺言書があれば検認、ない場合は遺産分割協議書を作成 不動産の名義変更も必須

 夫婦どちらかが先に逝った時、遺された側がまず直面するのが押し寄せる「死後の手続き」である。解約するもの、申請するもの、そして相続の準備……喪失感のなか行なうにはあまりに膨大な作業だ。死後1か月で済ませるべき手続きが終わると、いよいよ相続の手続きが本格化していく。

 葬儀を終え四十九日が過ぎると、相続の手続きが本格的に始まる。

 必要があれば死後10か月までに相続税の申告と納税をするが、期限が決められた他の相続に関する手続きも行なわなければならない。司法書士行政書士MY法務事務所代表で司法書士の村田洋介氏が言う。

「遺言書があるとスムーズに手続きが進みます。まず遺言書の検認をします。家庭裁判所で遺言書を開封する作業のことで、遺言書は自宅で勝手に開けると5万円以下の過料を科される場合があります」

 検認せずに遺言書を実行しようとしても無効となり、相続手続きができないので注意したい。なお2020年7月から自筆証書遺言を法務局で管理してもらえる制度ができ、これを利用すると検認作業が不要になる。亡くなると指定した人へ遺言書の存在を通知してもらえることもメリットだ。

 死後3か月には、相続しない場合の相続放棄申述書の提出期限がやってくる。司法書士法人東京さくら代表で司法書士の三浦美樹氏が言う。

「相続財産に負債が多い場合、相続するとその負債も相続人が請け負うことになります。相続を放棄すればその責は免れますが、亡くなったことを知ってから3か月以内に決めなければなりません。期間内に申し立てなければ自動的に相続することになります」

 夫婦の財産の内訳がわかる財産目録や、何よりも遺言書があれば手続きは難しくない。遺言書がない場合には法定相続人を全員集めて話し合いのうえ、遺産分割協議書を作成するなど手間が増える。

 相続税の申告が終わった後も法改正により手続きが必須となった項目が増えた。不動産の名義変更だ。

「今年4月に義務化された制度で、不動産を相続したら被相続人から名義を変更(相続登記)する必要があります。相続登記は個人でもできますが、司法書士などのプロに任せたほうが無難です。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に行なう必要があり、怠ると10万円以下の過料が科せられる可能性があります」(同前)

 一連の手続きについて、昨年7月、高校時代から連れ添った妻(享年69)を乳がんで亡くした歌手でタレントの円広志さん(70)が振り返る。

「没後半年間は本当に大変でした。そうした日々を経て徐々に落ち着いてくると、『そうか、妻とはもう会えないんだ』と寂しさを実感することがポツポツと出てきた。逆に言えば、手続きに追われる日々がなく、ひとりで何もやることがない状況だったら一気に落ち込んでいたと思います。死後の手続きは、少しずつ妻の死を受け入れて消化していくために必要な作業だったのかもしれません」

※週刊ポスト2024年7月19・26日号