熊本・大分県の涌蓋山での地熱発電所計画、資源調査が大詰め…建設可能性高まり「噴気試験」開始

AI要約

九州電力が熊本県小国町とまたがる大分県九重町で2017年度に着手した地熱発電の資源調査が大詰めを迎えている。6月に新たな発電所建設の可否を最終的に判断するための「噴気試験」が始まった。

現在の噴出量や温度、成分を調査し、持続的な発電が可能かどうかを判断する予定で、九州電力にとっては大分県内で6番目の地熱発電所になる見込み。

地下1900メートルまで掘り進めた井戸で行われる試験を経て、営業運転に適したかどうかを評価し、建設に向けた準備を進めている。

 九州電力が熊本県小国町とまたがる大分県九重町の涌蓋山で2017年度に着手した地熱発電の資源調査が大詰めを迎えている。6月に新たな発電所建設の可否を最終的に判断するための「噴気試験」が始まった。今年度中の予定で蒸気の噴出量や温度、成分などを見極め、持続的な発電が可能と判断されれば建設に向けた動きが本格化する。(秋吉直美)

 営業運転にこぎ着ければ、九電グループが大分県内で手がける地熱発電所としては6か所目になる。

 調査地は両県にまたがる涌蓋山の東部地域、標高約900メートルの山あいにある。地中深くに掘り進めた井戸から大量の蒸気が轟音を伴って噴き上がる様子は圧巻だ。

 「これまでのところ噴出量は十分。勢いが衰える気配もなく、有望と考えている」。九電の再生可能エネルギー子会社「九電みらいエナジー」(福岡市)が噴気試験の現場を公開した6月21日、千手隆徳・地熱調査部長が手応えを口にした。

 同社によると、17~19年度に地熱発電が可能かどうか、地下の構造を推定するための「地表調査」を実施。20年度から、実際に井戸を掘って地下の構造や熱水の在りかなどを直接確かめる「掘削調査」に入った。これまでに3本の調査井を掘り、今回、発電所建設の可能性が高まったとして「噴気試験」に乗り出した。

 試験は地下1900メートルまで掘り進めた「2号井」で行い、約1年かけて具体的な資源量のほか、事業として成り立つかどうか精査する。

 仮にゴーサインが出たとしても営業運転を始めるまでにはかなりの時間がかかりそうだ。同社は環境影響評価などの実施に3~4年、さらに、発電用の「生産井」や発電に使った熱水を地下に戻す「還元井」の整備、パイプラインなどの設置に3~4年はかかるとみる。出力は掘り当てた地熱貯留層の規模によって決まるため、「現時点では数千キロ・ワットとしか言えない」(千手部長)としている。

◆地熱発電=地下1000~3000メートルに達する井戸を掘り、「地熱貯留層」から噴出する高温の熱水を吸い上げ、分離した蒸気でタービンを回す。石炭や石油といった化石燃料を必要としない再生可能エネルギーで、太陽光などと違って天候や季節に左右されず安定的に発電できることから「ベースロード電源」と位置づけられる。