海上自衛隊最大級の戦闘艦「イージス・システム搭載艦」――防衛白書でその姿が明らかに!

AI要約

海上自衛隊が開発中の最大級の戦闘艦「イージス・システム搭載艦」について解説。

これまでのイージス・システムの発展経緯や、地上配備計画が白紙になった経緯を紹介。

イージス・システム搭載艦の特徴や将来的な運用について詳細に掘り下げる。

海上自衛隊最大級の戦闘艦「イージス・システム搭載艦」――防衛白書でその姿が明らかに!

海上自衛隊最大級となる戦闘艦「イージス・システム搭載艦(Aegis System Equipped Vessel、ASEV)」の姿が徐々に明らかになってきた。7月12日、最新のイメージ画像が公開されたのだ。全長190m、基準排水量12000トンは、航空機母艦である「いずも」型や「ひゅうが」型を除くと、既存のあらゆる護衛艦を大きく上回る。いったい、どのような船なのか?【自衛隊新戦力図鑑】

TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki)

まず、「イージス・システム搭載艦とは何か?」から、説明していこう。もともと、日本にとって安全保障上の大きな脅威となっている北朝鮮の弾道ミサイルから日本を防衛するため、地上配備の防空システム「イージス・アショア(地上配備型イージス)」の建設計画が2018年から進められていた。「イージス(Aegis)」とは、アメリカ海軍が開発した艦艇搭載の防空システムであり、日本でも「こんごう」型、「あたご」型、「まや」型などのイージス護衛艦に搭載されている。

2000年代以降、弾道ミサイルの脅威が高まるなかで防空能力の高いイージス護衛艦には、弾道ミサイル防衛(BMD)の役割が期待されるようになったが、本来の役割は艦隊の防空であり、BMDは大きな負担となっていた。そこでBMD専従で、整備などの手間が少ない地上施設であるイージス・アショア計画が立ち上がったのだ。

日本全体をカバーできるよう、北の秋田県と西の山口県、2カ所の建設予定地まで決定していた同計画だったが、防衛省側の対応のまずさから地元住民の理解を得られず、2020年に当時の河野防衛大臣によって中止が判断されてしまう。地上配備が白紙になったことで、代替案として浮上したのが、イージス・アショアと同等の性能を持つBMD専従艦の建造――「イージス・システム搭載艦」である。

7月12日、防衛省は令和6年度の防衛白書を公開し、そのなかでイージス・システム搭載艦の新たな画像が掲載された。冒頭に掲載した画像がそれだ。全体としては海自最新鋭のイージス護衛艦「まや」型を拡大したような形状だが、異なる点も多い。まず弾道ミサイル防衛に優れた「AN/SPY-7」レーダーを搭載する高く大きな構造物が目に付く。また、「SM-3ブロックIIA」や「SM-6」といった防空ミサイルを収納する垂直発射装置(VLS)が艦の前後に設けられている。

艦首側甲板は、以前のイメージ画像では「まや」型と同じく錨鎖(アンカー・チェーン)が露出していたが、「もがみ」型護衛艦のようなフラットなものになった。甲板下に錨甲板を設けて収納したのだろう。錨そのものも、側面に露出していない。ステルス性への配慮が窺える。

船体中央やや後方、第2煙突の横に小さな砲塔のようなものが確認できる。以前から噂されていた遠隔操作式30mm機関砲塔かもしれない。30mm口径機関砲の搭載は護衛艦では例が無いが、近年急速に普及している自爆型の無人航空機や無人水上艇の迎撃用とされる。また、イメージ図の解説では対ドローン用の高出力レーザー砲の搭載も言及されている。

イージス・システム搭載艦は、BMD専従艦として計画がスタートしたが、南西諸島防衛を踏まえて将来的には対艦・対地攻撃能力も与えられることになり、長射程の対地ミサイル「トマホーク」や、開発中の対艦ミサイル「12式地対艦誘導弾 能力向上型(海上発射型)」などが搭載される。

弾道ミサイル防衛はもちろん、対地・対艦の長射程ミサイルまで備えるイージス・システム搭載艦は、まさに日本を守る「イージスの盾」と言えるだろう。2隻の建造が予定されており、1番艦は2027年に、2番艦は2028年の就役を予定している。