“毎年20億円”税金を投入する札幌ドーム。「収支」や「命名権」よりも「十分な説明を果たすべき」問題が

AI要約

札幌ドームが2024年3月期に6億5100万円もの赤字を出し、施設の管理運営に関する問題が浮上している。

札幌市民には直ちに影響はないが、内部留保はまだ十分であり、損失に耐えうる体力を持っている。

札幌ドームの巨額な建設費用や市債の償還、保全費用により、毎年20億円近い税金が投入される状況にある。

“毎年20億円”税金を投入する札幌ドーム。「収支」や「命名権」よりも「十分な説明を果たすべき」問題が

 中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。

 札幌ドームが2024年3月期に6億5100万円もの赤字を出しました。2023年3月期は1億2000万円の黒字。日本ハムファイターズの本拠地移転の影響が大きいのは、あらゆるメディアで報じられている通りです。

 この問題はとかく収支のことばかり取り沙汰されますが、もっと本質的な課題を抱えています。施設を建設した目的を果たしていないのではないか、というものです。

 今回赤字を出した株式会社札幌ドームは、施設の管理運営を担っている会社。札幌市が55%の株式を所有しています。札幌市以外には、北海道電力、北海道新聞社、北海道銀行などが出資をしています。この方式を一般的に第三セクターと呼びます。

 この会社の代表取締役社長は山川広行氏。北海道銀行の副頭取を務めた後、2017年6月に社長に就任しました。副社長の石川敏也氏は現役の札幌市副市長。常務取締役の藤部安典氏は2023年5月31日に札幌市総務局共済担当部長の職を終え、その年の4月1日に現在のポジションに就いています。

 社長の山川氏は地方創生に取り組んだ実績を持っているものの、施設運営に明るいとは言えないでしょう。常務取締役は分かりやすいほどの天下りであり、こうした経営体制も批判される要因の一つとなっています。

 さて、札幌ドームは6.5億円の赤字を出しましたが、これが札幌市民に対してすぐさま影響を与えるわけではありません。この会社には十分な内部留保があるためです。

 2023年3月末時点の繰越利益剰余金はおよそ16億円。それが損失によって削られ、2024年3月末に9億円となりました。ただし、事業開発積立金がまだ6億円残されており、利益剰余金全体としては15億円残されています。保有する現金は22億以上。中期的には、ある程度の損失に耐えうる体力を十分持っていると言えるでしょう。つまり、市などからの損失補填や、資金調達が必要な窮地にまでは追い込まれていないのです。

 ただし、札幌ドームには建設費として422億円投じられています。土地代や利子を含めると660億円という巨大プロジェクト。札幌市単体の負担は302億円で、借入金は395億円。借入期間は30年で、最終償還は2031年度。返しきるまでに、まだ7年あります。しかも、札幌市はドームの保全費用として2022年に6.5億円を計上し、2023年に9.2億円の予算を組んでいました。

 市債の償還と保全費用で、毎年20億円近い税金を投入していることになります。これは施設を立ち上げた時点で、半ば運命づけられていたと考えるべきでしょう。