「本当に日本はアメリカより遅れている?」アメリカで起業を教える日本人講師が語る、本当の日米ビジネス情勢

AI要約

アントレプレナーシップとは、「起業家精神」を意味し、高い創造意欲とリスクを恐れず挑戦する姿勢である。近年注目が集まっており、現代社会で成功するために必要不可欠な考え方とされている。

アメリカと日本のビジネス環境や起業家の気質の違いについて議論されることがあり、アメリカが「先進」であり、正しいように思われる傾向がある。しかし、アメリカには極端さや早すぎる変化といった逼迫感も感じられる。

過去には日本も経済大国として栄え、日本型経営や終身雇用制度などがアメリカに学ばれる時期もあった。ビジネスのトレンドは流れがあり、アメリカがリードすることが多いが、それぞれの国には学ぶべき点が存在する。

「本当に日本はアメリカより遅れている?」アメリカで起業を教える日本人講師が語る、本当の日米ビジネス情勢

近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。

本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。

『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第38回

『「目隠し競走」に応用版「箱の中身はなんだろな?」...一風変わった授業から知る「成功したい人」に必須の視点』より続く

アメリカで一年の大半を暮らしている身として、時折聞かれる質問に「アメリカと日本の違い」があります。ビジネス環境や起業家の気質に違いはあるかと聞かれることもあります。そういった質問の端々に、「アメリカのほうが先を行っている」という意識、スタートアップ大国アメリカに対して、後れをとる日本というニュアンスが見え隠れしていると感じるときもあります。

たしかに、ビジネスの世界では「アメリカで起こったことは、そのまま世界に波及する」という傾向があります。IT業界、マーケティング業界はとくにアメリカ主導の傾向が強く、「アメリカで起こったことが数年後に日本で起こる」と当たり前のように言われます。

こうなるとアメリカが「先進」であり、正しいように思えます。そこで、日本人でありながら、アメリカの大学で教鞭をとっている私の想いはこうです。

「アメリカってそんなに先を行ってるのか?日本はそんなに乗り遅れているのか?」

そもそも50州から成り立っているので、一概に「アメリカ」と括ることは難しいのですが、そのなかで4つの州(カリフォルニア州、オハイオ州、テキサス州、マサチューセッツ州)に住んだ経験から、言葉を選ばずに言うと、「ちょっと荒れてないか?」と感じることも多いのです。何かと極端だったり。変化も早い。ついていけないと置いてきぼりになってしまいそうな逼迫感。

格差社会。最近、日本でも言われますが、これも長い時間をかけて、アメリカ型の社会構造が移ってきているのかなどと考えてしまいます。それは仕方がないことだという考えもあります。資本主義とはそういうものだ。そもそも自然界だって、弱肉強食だ、と。

あるとき、こんな話をしていると、会話の相手はこんなことを言いました。

「でも山川さん、大昔の話ですが、Japan as No.1って言われた時代がありましたよね。アメリカ企業がこぞって日本型経営を研究した時期がありましたよね」

これを聞いて、少し見えてきた気がしました。もちろん、ビジネスのトレンドの流れはあり、それはアメリカ発になることが多いのは事実です。よく、日本型の終身雇用制度や年功序列は悪い制度だとも言われます。古臭い、硬直している、組織の変革を阻害するとも。でもその利点をアメリカが学ぼうとした時期もたしかにあったのです。