顧客の「欲しい」を見つける「バリュー・プロポジション・キャンバス」の使い方とは?

AI要約

将棋に「定石」があるように、ビジネスには経営学者や実務家によって開発された「フレームワーク」がある。思考を助ける枠組みであり、アイデア創出やニーズの発見、課題の洗い出し、戦略立案、業務改善など、活用シーンはさまざま。

第3回では、「バリュー・プロポジション・キャンパス」に焦点を当てる。このフレームワークは、自社の事業や製品の価値提案と顧客のニーズがフィットしているかを検証するためのものである。

使い方として、顧客セグメントの定義や顧客のニーズの把握、自社の価値提案と顧客のニーズの対比など、具体的なステップが紹介されている。

 将棋に「定石」があるように、ビジネスには経営学者や実務家によって開発された「フレームワーク」がある。思考を助ける枠組みであり、アイデア創出やニーズの発見、課題の洗い出し、戦略立案、業務改善など、活用シーンはさまざま。その概要と使用法を心得ておくことが、ビジネスパーソンにとっての大きな武器となる。本連載では、事例・参考例が豊富な『ビジネスフレームワークの教科書 アイデア創出・市場分析・企画提案・改善の手法55』(安岡寛道、富樫佳織、伊藤智久、小片隆久共著/SBクリエイティブ)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第3回は、新製品や事業の構想に加え、既存の製品・サービスの見直しにも活用できる「バリュー・プロポジション・キャンパス」を取り上げる。

■ バリュー・プロポジション・キャンバス 概要

 バリュー・プロポジション・キャンバスは、「自社の事業や製品の価値提案」と「顧客のニーズ」がフィットしているかどうかを検証するフレームワークです。バリューとは「価値」、プロポジションとは「提案」という意味です。

 バリュー・プロポジション・キャンバスは、上の図のように円と四角形の2つの図形で構成されており、左側の四角に「自社が提供する製品の構成要素」、右側の丸い部分に「顧客のニーズや情報」を記入します。

 なお、バリュー・プロポジション・キャンバスは、新製品や新サービス、事業の構想時だけでなく、既存製品やサービスの見直しにも活用できます。

■ 使い方

 バリュー・プロポジション・キャンバスの各項目を記入していきます。各項目を書き込む順序に決まりはありません。「客観的な情報」に基づいて記入しやすい箇所から進めてください。

 (1) 顧客セグメント

 右上に「顧客セグメント」を記入します。顧客セグメントとは、顧客を年齢や性別、居住地、職業などで分類した顧客のグループです。バリュー・プロポジション・キャンバスでは、製品やサービスを使う顧客グループを定義します。

 (2) 右側の円

 右側の円は以下の3つの領域に分割されています。

 なお、顧客の仕事、顧客のペイン、顧客のゲインに記入する内容はいずれも、客観的根拠に基づいたものであることが重要です。このフレームワークは、ビジネスモデルの中核をなす「価値提案」が「顧客のニーズ」とずれていないかを詳しく検証するためのものなので、正しい情報を把握することが必要です。事前に顧客アンケートなどでデータを収集しておくと正確に記入できるでしょう。

 【ここがポイント!】

右側の円には、客観的根拠に基づいた内容を記入する

 (3) 左側の四角形

 左側の四角形は以下の3つの領域に分割されています。

 上記の各項目を記入する際は、右側の円形に書かれた項目と対比させることを意識してください。

 ただし、右側と左側の内容にギャップがあったとしても、記入内容を無理やりどちらかに合わせて修正する必要はありません。

 このフレームワークはあくまでも、「自社事業や製品の価値提案」と「顧客のニーズ」がフィットしているかどうかを検証するために用いることが大切です。そのため、ずれがあった場合は「どのようにしてそのずれを埋めるか」を検討していくとよいでしょう。

 【ここがポイント!】

左側の四角形に記入する内容は、右側の円形に書かれた項目と対比させる

 (4) 価値提案

 それぞれの項目を書き込んだら、改めて「顧客に提供する価値は何か」を検討し、図の左上にある「価値提案」にその内容を記入します。

 そのうえで「自社の製品による価値提案」と「顧客のニーズ」が合致しているかを検討し、さらには、顧客も想定していない解決策やメリットを実現できるかを検討します。

 【Memo】

 ここで検討する「価値提案」と「顧客セグメント」は、オスターワルダーらが作った「ビジネスモデルキャンバス」に対応しています。