「債券村」住人が屋形船に再集結、日銀再利上げ備え引く手あまた

AI要約

債券村と呼ばれる債券市場の関係者たちが再会する屋形船の会が再開され、金融アナリストの久保田氏が主催した。

日本銀行の金融政策変更や新型コロナウイルスの影響により再会が中断されていたが、再開された。

債券村には隠語や日本独特の取引文化があり、国内債券市場の外からは閉じた世界に見えるとの印象もある。

「債券村」住人が屋形船に再集結、日銀再利上げ備え引く手あまた

(ブルームバーグ): 元日本国債ディーラーの久保田博幸氏は昨秋、「債券村」とも呼ばれる債券市場の関係者たちが集う屋形船の会を数年ぶりに再開した。海外の市場関係者から閉鎖的と捉えられてきたこの村の住人たちが、いま世界のヘッジファンドなどから熱い視線を浴びている。

主催した久保田氏は20年前と「雰囲気は変わっていない」と話す。参加者にはかつて「金利のある世界」で稼いできた往年のプロたちもいる。現在は50代から60代だ。東京スカイツリーやレインボーブリッジが映える夜景もよそに、屋形船の上は国債という共通の話題と、久々の再会に「盛り上がった」と言う。

久保田氏は国内証券などで十数年にわたり国債取引を経験した。現在は金融アナリストだ。自身が運営する債券専門のオンラインコミュニティーのメンバーと1998年以降、一時期を除きほぼ毎年のように集会を開いてきた。

日本銀行が金融政策を変更する中、新型コロナウイルスで中断されていた屋形船の会を再開させた。日銀は2023年10月に国債金利の誘導目標を柔軟化し、24年3月には17年ぶりの利上げに動いた。年内の再利上げが予想される中、約1200兆円に上る国債市場のボラティリティーは08年の金融危機以来のレベルに急上昇した。

20年ほど前の「債券村」は、海外勢から内向きな集団として見られてきた。集まりの場で扱う資料や交わされる会話が日本語中心だったことなどから、立ち入りにくい場所との印象を与えていたようだ。

債券村の住人で1991年から債券のポートフォリオマネジャーとしてキャリアをスタートさせたアムンディ・ジャパンの有江慎一郎チーフ・インベストメント・オフィサーは、「意識的に排他的、エクスクルーシブにしているわけではない」と話す。英語でのやり取りの機会もないため、国内債券市場の外から「閉じた世界」に見えるのではないかとみている。

元国債トレーダーで、2000年に小説「日本国債」を執筆した幸田真音氏は、「債券村には日本独特のところがある」と語る。村の住人同士の情報交換は非常に重要で、大口投資家が国債を売却するとのうわさで市場が動く可能性もあるため、取引執行を迷う運用資産の大きな投資家を「池の中のクジラ」と呼ぶなど隠語も多く使われているという。