中立金利は上昇していない、NY連銀総裁が推計値を引用して反論

AI要約

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、新型コロナウイルスのパンデミック以降に上昇した自然利子率に反論した。

ウィリアムズ総裁は、Rスターの推計値を引用し、中立金利が上昇した兆候はないとの見解を示した。

金融政策の要となる中立金利の議論や生産性の伸びが中立金利に与える影響について議論が続いている。

(ブルームバーグ): ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、「r*(Rスター)」と呼ばれる自然利子率(中立金利)が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降に上昇したとの最近の論評に反論した。同総裁はRスターを深く研究していることで知られる。

ウィリアムズ総裁は3日、ポルトガルのシントラで開催された欧州中央銀行(ECB)フォーラムでパネルディスカッションに参加。米国とユーロ圏のRスターがコロナ禍前の水準に近いとした最近の推計値を引用した。発言内容は事前に公表された原稿に基づく。

「2つの推計値には短期的な振れが見られるものの、過去30年間、Rスターが2ポイント低下し続けてきたことが共通の特徴だ。同じことがカナダにも当てはまる。したがって、これらの推計によればRスターの低い基調は続いている」と話した。

ウィリアムズ総裁は、今年これまでのデータでは中立金利が上昇した「兆候はない」とする5月の見解を繰り返した。

長期自然利子率は、経済がショックに動じず潜在成長率で推移している時に広がる考え方で、金融政策の要となるが、直接測ることはできない。金融当局は中立水準を上回るレベルに政策金利を引き上げることで、景気を抑制しインフレと闘う。

景気が底堅いため、中立金利がコロナ禍以降に上昇し、金融政策が以前考えられていたほど景気に抑制的でないのではないかとの議論が浮上している。

6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に公表された金利予測分布図(ドットプロット)によれば、金利の長期的な着地点に関する予想は2.8%と、3月時点の2.6%から引き上げられた。同会合の議事要旨は3日午後に公表される。

FOMCは金利据え置き、24年利下げ予想1回に減少-来年は4回 (4)

ウィリアムズ総裁は発言に続くディスカッションの中で、人工知能(AI)が生産性を大幅に押し上げるのか、それともその効果がより緩やかなものになるのかは、時間がたてば分かることだと述べた。生産性の伸びが加速すれば、資本需要が高まる中で中立金利が上昇する可能性がある。