「ロシア上空を迂回」なぜ往復でルートが異なる? JAL・ANA欧州線 「北回り」の方が距離は短いが

AI要約

2022年に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、JALとANAはロシア上空を避けるため、異なる飛行経路を採用している。

欧州発では南回りルートを使う理由として、ヒマラヤ上空の強い追い風が飛行時間を短縮し、経済性を高める点が挙げられる。

しかし、状況に応じて日本発で南回り、欧州発で北回りを使うこともあり、その際には代替空港の選択肢など、新たな対応が求められる。

「ロシア上空を迂回」なぜ往復でルートが異なる? JAL・ANA欧州線 「北回り」の方が距離は短いが

 2022年にロシアによるウクライナの軍事侵攻が始まって以来、JAL(日本航空)・ANA(全日空)の欧州線では、ロシア上空を迂回する飛行経路を採用しています。各社ともに2024年時点では、日本発の路線では出発後アラスカやグリーンランドの上空を経て欧州に至る「北回りルート」を、欧州発では欧州からいったん南下し中東や中国上空を経て日本に至る「南回りルート」で飛ぶのがスタンダードです。

 なぜ往路と復路で異なる飛行ルートを採用しているのでしょうか。

 たとえばJALの担当者は過去の取材に対し、羽田~ロンドン線では「北回りは南回りと比べて100マイル(約185km)程度、飛行距離に差があり(北回りの方が遠い)」と話します。にも関わらず、欧州発で南回りを多く用いるのは、次のような理由でした。

「(南回りルートにある)ヒマラヤ上空では強いジェット気流が吹きます。そのため、風向きまで考慮すると一概に北回りが遠いとはいえないと考えています」

 つまり、欧州発ではこれが強い追い風に。「北回りルート」より飛行時間が短く、経済性も高いフライトにつながります。

 なお、JALは当初、日本発・欧州発ともに北回りを採用していましたが、その後現在の運用に変更。このとき、たとえばロンドン→羽田の南回り便では、北回りと比べて1時間30分から1時間40分ほど、短くなったと記録されています。

 ただ、状況に応じて、日本発で南回り、欧州発で北回りが使用されることもあります。こういった便を担当したANAのとあるパイロットは、かつてのロシア上空を飛ぶルートとの差を踏まえて、このように振り返ります。

「万が一の際に目的地以外の着陸先として設定されている『代替空港』が、迂回ルートでは少ないというのもこれまでと違うところです。以前、北回りルートの東京発の便を担当したとき、カナダ北部やアイスランドの気象条件が悪く、代替空港として使用できないことがあり、フライト直前に回復の見込みが立たないとして、南回りルートに変更となったことがありました」

 時間的な制約があるなか、普段の想定と違った対応を求められるケースもあるのが、準備面などで従前とは違うところだということです。