新紙幣の肖像3人「歴史重要度」は低めのスタート 山川教科書で登場回数を独自検証 渋沢栄一 津田梅子 北里柴三郎

AI要約

新しいお札の肖像に選ばれた渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎のゆかりの地や関係団体では業績をたたえる動きが最高潮になっている。

お札の肖像になる人物について知識がないと、一般教養や家庭生活の上で“マズイ”のだろうか。

肖像の人物について現時点での教育的見地から重要度の集計を試み、元1000円札・伊藤博文、元500円札・岩倉具視などがトップグループに位置づけられている。

新紙幣の肖像3人「歴史重要度」は低めのスタート 山川教科書で登場回数を独自検証 渋沢栄一 津田梅子 北里柴三郎

新紙幣の発行が7月3日(水)に迫った。

新しいお札の肖像に選ばれた渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎のゆかりの地や関係団体では業績をたたえる動きが最高潮になっている。

ただこの期に及んでも、名前は聞いたことはあるが、何をした人なのか正確に語る自信はないという方が少なくないだろう。

お札の肖像になる人物について知識がないと、一般教養や家庭生活の上で“マズイ”のだろうか。

戦後の1946年に発行を開始したお札「A券」以降で肖像で登場したのは、「聖徳太子」(厩戸王)、二宮尊徳、岩倉具視、板垣退助、高橋是清、伊藤博文、福沢諭吉、新渡戸稲造、夏目漱石、樋口一葉、野口英世の11人。

新紙幣の渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎で計14人になる。

肖像の人選は、関係機関で協議して最終的には財務省が決める。

国立印刷局によれば、偽造防止や肖像彫刻の観点に加えて「肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていること」を基準にして、現在は明治以降の人物から選んでいるとしている。

この「国民各層」「業績が広く」とは何かだ。

今回、肖像の人物について現時点での教育的見地から重要度の集計を試みた。

用いたのは、都内有名進学校で多く採用され歴史書で知られる山川出版社の教科書の中学生向け『中学歴史-日本と世界』、高校生向けのうち『歴史総合-近代から現代へ』と『詳説日本史』の計3冊。いずれも最新版。特に『詳説』は大学入試で日本史を選択した人は一度は聞いた名前だろう。

人名の登場回数を基本に、本文・特集記載、太字、単独肖像写真といった加点要素を考慮したポイント制とした。その結果…。

肖像の重要度は大きく上位・中位・下位の3グループに分かれた。

トップは元1000円札・伊藤博文(59点)だった。登場回数が計21ページと圧倒的に多い。明治期に4回も総理大臣だったことが大きい。

2位は元500円札・岩倉具視(46点)。明治初めに米欧に派遣された「岩倉使節団」は岩倉、伊藤、津田梅子の3人が肖像入りする“お札の名門”になった。

上位グループはこのほか現1万円札・福沢諭吉(43点)、元100円札・板垣退助(36点)、元50円札・高橋是清(32点)を含めた計5人である。

今回で肖像を引退する福沢諭吉。印刷局は「明治の思想家で慶應義塾大学を設立した」と説明している。

ところが山川教科書に沿うと、「『学問のすゝめ』『文明論之概略』で国民に新思想を紹介し、慶應義塾を創設。「脱亜論」でアジア連帯を否定して清との軍事的対決の気運を高めた」ということになる。印刷局は「脱亜論」に触れていない。「業績」までには含めないということだろう。

いずれにせよ「福沢諭吉」「学問のすゝめ」「慶応義塾」の3点セットは知らないと一般教養としても家庭生活上も“マズイ”レベルだ。