沖縄健康食品素材、国内外で脚光

AI要約

沖縄県産の健康食品市場が注目される中、伝統的な島野菜や果実、海藻などの素材にエビデンスデータが加わり、内外で脚光を浴びている。

シークヮーサーやフコイダン、ウコンなどの定番素材の人気に加えて、微細藻類原料や新たな有機原料も注目されている。

沖縄県では「食はクスイムン」「ヌチグスイ」の思想があり、健康食品を取り巻く研究や商品展開が活発化している。

 伝統的な島野菜や果実、海藻などの農水産物にエビデンスデータが加わり、沖縄素材が国内外で脚光を浴びている。シークヮーサー、フコイダン、ウコンといった定番素材の広がりに加えて、微細藻類原料や有機原料なども注目され始めている。アップサイクルや観光保全につながる健康素材も多く、SDGsの観点からも関心が集まっている。海外では、世界に5つしかない長寿地域「ブルーゾーン」として、沖縄県の認知度は非常に高く、海外展開を加速する事業者の後ろ盾となっている。沖縄健康食品市場の現状を追った。

■「食はクスイムン」

 沖縄県では、中国の医食同源の考えを受け、古くから「食はクスイムン(薬になるもの)」「ヌチグスイ(命の薬)」という思想がある。伝統的な島菜野や果実、海藻などの農産物を食してきたことが長寿を支えてきた要因だった。県では、ゴーヤー、紅イモ、カンダバー、クワンソウなどの伝統的農産物を「沖縄伝統野菜28品目」として定めている。

 これら沖縄食材の伝承的薬効に対して、産官学がスクラムを組み、機能性研究を推進。エビデンスデータが徐々に蓄積されてきた。沖縄県などが支援する健康食品のブランド化に向けた沖縄独自の認証制度「WELLNESS OKINAWA JAPAN(WOJ)」(事務局:沖縄県健康産業協議会)は、サプリメント、飲料、茶、ゼリーなど、累計認証数は26商品(17社)となった。現在も複数社から申請の相談が寄せられているという。

 県内での普及活動を強化しており、名桜大学の健康支援団体や民間の医療法人グループと連携し、健康測定会時に認定商品などを紹介。沖縄県健康産業協議会・専門コーディネーターの照屋隆司氏は、「認定商品が増え、普及活動がしやすくなった。物販の売上にもつながっており、一定の成果が出ている。県外活動を増やしていきたい」と意気込む。

 機能性表示食品の開発では、県内事業者による受理件数は40品を超えた。シークヮーサー、ヘチマ、クワンソウなどの県産素材を用いた機能性表示食品も登場している。

 沖縄県では、2022年にバイオ関連産業振興計画(健康・医療分野)を策定。バイオ関連産業全体の売上高は153億円(推定)で、健康食品が8割近くの121億円を占める。引き続き、県産素材のエビデンス取得や、高付加価値化を図るために機能性表示食品、 WOJ認証商品の開発に向けた支援などを行っていく。また、健康・医療分野を軸とした新たな産業拠点を形成し、さらなる県内バイオ産業企業の成長を目指す。

■シークヮーサー人気 フコイダン、ウコンも好調

 アイテム別でみると、シークヮーサーが飲料を中心に人気だ。県内外で県産品を取り扱う「わしたショップ」や「沖縄宝島」でも、健康食品カテゴリーの売れ筋商品はシークヮーサー飲料が上位を占める。「わしたショップ」を運営する沖縄県物産公社では、「シークヮーサーは認知が高く、夏場以外も売れ行きが安定しており、定番品になっている」と話す。シークヮーサーの生産量は県内農産物の中では安定しており、供給面に不安要素が少ないことも強みとなっている。

 沖縄モズク由来フコイダンは、海外市場の需要増が続く。原料サプライヤーの金秀バイオ、ホクガンは、安定供給体制の下、販売地域の拡大を推し進める。また、微細藻類の研究・素材開発が活発に。クロレラ、ユーグレナなど以外にもラビリンチュラ、パブロバといったニューフェイスが登場。環境負荷が少ない状況で培養できる点からSDGsの観点からも注目度が上昇している。

 定番素材のウコンは、コロナ収束に伴い、外食機会が増え、取扱い事業者からは、「販売量が伸びている」といったコメントが多かった。別名“眠り草”とも呼ばれるクワンソウは、睡眠分野で機能性表示食品の受理品が複数品登場。市場活性に弾みがつきそうだ。

 このほか、スーパーフード素材のモリンガ、抜群の認知を誇る紅イモ、活力系素材のクーガ芋やスッポン、フェムケア分野で利用が期待されるフーチバー(ニシヨモギ)やクミスクチンなど、注目素材が目白押しとなっている。

 今回、県内各社への取材では、「ウコンサプリメントがコンビニエンスストアで販売が始まった」「県内観光客が増え、土産店、免税店からの注文がコロナ前に戻った」「県内活動を強化する中、美容家とコラボした快眠サプリの開発が実現した」「米国など海外供給量が伸長している」「女性が気軽に飲みやすい琉球もろみ酢の新製品を投入する」「化粧品のノウハウをもとに、健康食品の開発に着手する」など、明るいコメントが多数聞かれた。

 また、栽培地域は少ないものの、有機原料を差別化に生産、加工などを強化する動きや、農産物・海産物の残渣活用など、アップサイクルに取り組む事業者も目立つ。コロナが収束し、沖縄健食産業が「沖縄ブランド+α」を武器に県外、海外に向けて大きく動き出している。