地域社会が抱える課題を解決するサーキュラーユニフォームとは?産業廃棄物として処分される企業ユニフォームを再利用するHARADA株式会社に聞く

AI要約

日本にとってゴミに関する環境問題は、20年後のゴミ処理場の不足や巨額な処理費用が深刻なテーマとなっている。

「サーキュラーユニフォーム」は使用済みのユニフォームを回収してリサイクルし、地域社会の課題解決を目指す取り組みである。

ユニフォーム専門会社が展開する「アップサイクル企画」は、障害のある人と共に地産地消のSDGsに取り組む活動であり、自治体や企業と連携して行われている。

地域社会が抱える課題を解決するサーキュラーユニフォームとは?産業廃棄物として処分される企業ユニフォームを再利用するHARADA株式会社に聞く

日本にとってゴミに関する環境問題は、「20年後、ゴミを埋める場所がなくなる」「ゴミ処理費用、年間2兆885億円の税金」といった深刻なテーマになっている。そんななか、地域社会が抱える課題に対し、自治体と連携して解決を目指す取り組みのひとつとして「サーキュラーユニフォーム」がある。

<サーキュラーユニフォームとは>

使用済みのユニフォームを回収してリサイクルし、再びユニフォームとして生まれ変わるという仕組み。

今回、サーキュラーユニフォームといった「アップサイクル企画」に取り組むユニフォーム専門会社・HARADA株式会社 執行役員 営業企画室マネージャー兼SDGs推進室室長・木村裕光さんを取材。繊維業界に携わる企業として社会課題に立ち向かっていくサスティナブル事業「E+(イープラス)」への取り組みについて話を聞いた。

――「アップサイクル企画」についてスタートはいつからでしょうか。

【木村裕光】スタートは2023年9月です。私たちの主要取り扱い品目の「作業服」は廃棄物処理法に則り、使用企業は排出から最終処理まで適切に処理することが必要ですが、そのことを知らない企業は少なくありません。また弊社の主要顧客である中小企業の多くは人材確保や設備投資等に取り組むことが最優先事項であり、SDGsに取り組むまでに至らず、「環境コンシャス」(自然環境の保護に関心を示すこと)の企業が少ないのが現状です。

社会的責任としてSDGsの取り組みが求められるなか、オリジナルユニフォームで会社のイメージを変えても、「環境コンシャス」でなければ表層的な施策で終わってしまいます。弊社としては、繊維業界が抱えるSDGsの問題に真摯に向き合い、サステナブルな社会の実現に向けて、ユニフォーム専門会社としての責任を果たしていきたいという想いがありました。同時に、お取引いただいている企業をはじめ、ユニフォームを必要とする中小企業がSDGsに取り組み、企業価値を高めるお手伝いをしたいという想いもあります。そのような背景のもと、ユニフォーム業界初となる取り組み、”サーキュラーユニフォーム”「E+」の活動を始めました。

――具体的にアップサイクルの活動内容を教えてください。

【木村裕光】障害のある人と共に取り組む地産地消のSDGsです。アップサイクル自体は、他の企業でも行われていますが、弊社の場合は地産地消、そして障害のある人と一緒に取り組むことという特徴を持っています。具体的には、使用済みユニフォームを排出した企業がある地域の授産施設等で、障害のある方にアップサイクル製品をつくっていただくということです。

――自治体や企業との取り組み事例があれば教えてください。

【木村裕光】さいたま市と連携し、同市の企業から出た使用済みユニフォームを同市の障害者支援センターでアップサイクルし、生まれかわった製品を再びさいたま市に本社を構える排出企業に購入いただくという取り組みを行っています。また、OUC本社がある山口県の周南市にある授産施設とタイアップして、企業から回収したユニフォームを活かしてテディベアをつくり、再び排出企業に購入してもらうという循環スキームづくりに取り組んでいるところです。産業廃棄物として処分される企業ユニフォームを再利用することで、環境にもやさしく、施設の運営にも協力することができます。また、仕事を通じて障害者の人たちの社会的自立に協力しています。

――「アップサイクル企画」の反響を教えてください。

【木村裕光】トレーサビリティと呼ばれる、自分たちの使った物が最終的にどうなったのかが「見える」アップサイクルが社内外で沢山の評価をいただいています。なにより、ゴミとして処分されるはずだった物が障害のある人の仕事と希望とサラリーを生み出します。そこで製作された物が再び自分たちのもとに戻ってくる。未来の希望がみえる循環型でサステナブルな、一歩先の地産地消であり、障害があるなしに関わらず、誰もが幸せになれる活動だと評価いただき、現在約10社の企業と商談が進んでいます。

――今後、「アップサイクル企画」をどう発展させていきたいと考えていますか?

【木村裕光】障害のある子どもたちが大人になったときのために、希望を持って働ける環境をつくっていきたい、そんな想いも胸に、一所懸命取り組んでいるところです。具体的には以下の内容となります。

障害者の就労率アップ

社会課題のひとつとして、労働可能な障害者人口の内14.6%しか就労できていない事があります。地域の施設等とのタイアップすることにより一人で多くの方が就労できる環境を作って行きたい。

全国の授産施設とのタイアップ

制作物の型紙、作成方法などを一般化し、また技術指導も合わせて行い、どこの施設でも作れる仕組みを作っていきます。全国の授産施設とのネットワークを構築していきたい。

アップサイクル企画の法人化

この活動を法人化できれば、沢山の障害者の受け口となり、且つ環境にも配慮したまったく新しい業態ができるので、是非実現したい。障害者の就労問題や昨今の労働人口減少問題にまた違ったアプローチで貢献できると自負しております。

自宅へ機材設置支援

ミシンなど制作に必要な機材を無償で設置。ヤングケアラー、介護、母子・父子家庭などの要因で、働きたくとも外で働けない人への支援。人手不足問題や働き方問題など総合的に解決できる施策。

自社生産工場設置(予定)

ワーキングプア、母子・父子家庭支援、障害者の雇用などに対応するべく、現在設計中の弊社新倉庫に縫製工場新設。元来日本は縫製関連事業所も多かったが、海外との価格差競争で衰退し、且つ人手不足倒産も急増している、物流問題同様に国内の縫製工場の状況は非常に厳しい。しかし、このアップサイクル企画が浸透することによってミシンが使える人が増えれば、多様な働き方を選択ができ短時で勤務したい主婦層などの受け口となります。

企業実績をもっと増やす。

産業廃棄物として処理するコストとアップサイクルされた商品のコストにまだまだ大きく開きがあり、アップサイクルは高い。という認識があるので、制作物の仕様などを見直し、価格メリットをだして行きたい(工賃は下げない)。

未来の希望がみえる循環型でサステナブルな活動「E+」。“誰もが幸せになれる”今後の活動に注目したい。

取材協力:ユニフォーム専門会社・HARADA株式会社