三菱UFJへの業務改善命令、金融庁が顧客軽視の姿勢を問題視…実効性ある防止策急務

AI要約

金融庁が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券2社に金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。顧客軽視の姿勢を重く見て、再発防止策が急務となる状況。

ファイアウォール規制への違反行為や非公開情報の無断共有が発覚。金融庁は法令順守と顧客情報管理に不備があると指摘。

FW規制に関する議論と規制緩和の可能性。欧米との違いや規制撤廃の影響についても考慮が必要。

 金融庁が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券2社に金融商品取引法(金商法)に基づく業務改善命令を出した。無断で情報共有を繰り返した3社の顧客軽視の姿勢を重くみた。国内トップの金融グループの信頼が揺らぐ事態で、実効性のある再発防止策が急務となる。(大塚健太郎、遠藤雅)

 「わが国を代表する金融グループで起きた顧客情報の不適切な授受であり、大変遺憾だ」。鈴木金融相は24日、3社の行政処分についてそう強調した。

 証券取引等監視委員会の検査で、顧客の非公開情報を無断共有することを禁じる「ファイアウォール(FW)規制」への違反行為が多数見つかった。

 一例が、三菱UFJ銀行の専務執行役員(当時)が株式の売り出しに関する非公開情報を三菱UFJモルガン・スタンレー証券側に提供した事実だ。証券側は情報に基づき事前に売り出しの準備ができ、グループで利益を上げられるためとみられる。

 金融庁は今回、FW規制を巡って銀行側の優越的地位の乱用こそ認定しなかったが、「勝手に情報共有したのは大きな問題」(担当者)と捉えている。法令順守や顧客情報の管理態勢に不備があると認定した。

 FW規制を巡っては、証券会社を傘下に持つメガバンクなどが、グループの総合力を生かした提案ができるよう政府に規制の撤廃を求めてきた経緯がある。一方、野村証券や大和証券といった独立系証券会社は撤廃に反対してきた。

 それでも規制は段階的に緩和され、2022年6月からは上場企業に限り、金融機関のウェブサイト上で告知しておけば、顧客に説明しなくても情報共有できるようになった。ただし、顧客が拒否しないのが前提で、今回3社は拒否されていたにもかかわらず共有した点が問題となった。

 欧米などでは特段の規制なく銀行・証券業務が一体的に行える。「日本のFW規制では、結果的に顧客の利便性が損なわれている」(別の大手行首脳)との声も聞かれるが、今回の不祥事で規制緩和の議論が進まない可能性もある。