円安というバーゲンセールはいつ終わる?行き過ぎた円安が増幅する「円急騰シナリオ」

AI要約

ドル円相場は植田日銀総裁の発言をきっかけに急騰し、160円台へ到達。

政府・日銀が大規模為替介入に踏み切るなど、状況が混迷している。

160円を超えると重要なチャートポイントなく、円安ドル高トレンドが可能性として浮上。

円安というバーゲンセールはいつ終わる?行き過ぎた円安が増幅する「円急騰シナリオ」

ゴールデンウイークの直前、155円台半ばで推移していた米ドル円相場(以下、ドル円)は、植田日銀総裁の「円安容認」ともとれる発言をきっかけに急騰。総裁発言から、わずか2営業日で160円台まで駆け上がった。

時間を戻すと、2024年4月26日には155.50円前後をつけていたが、158円台まで円安が進行。4月29日には160.24円と、1990年4月以来34年ぶりに160円台へと突入したのだ。

そんなドル円の動きに関して、三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏によるリポートが届いたので、概要をお伝えする。

「過度な変動が問題」と言い続けてきた当局としては、総裁発言をきっかけにドル円の変動率が急上昇したのはなんとも「バツの悪い状況」と言わざるを得ないだろう。

そうした事情もあってか、政府・日銀は計2回、総額約9兆8千億円の大規模為替介入に踏み切った。しかし、介入を決断した背景には、こうした事態を招いた責任感以外にも理由がありそうだ。

というのも、今回介入に踏み切った水準を抜けると、ドル円には当面目ぼしいチャート上の節目が見当たらないのだ。

長期のドル円相場を振り返ると、1985年2月のプラザ合意を契機に始まった円高ドル安トレンドは、2011年10月に75円35銭をつけて終了し、その後のもみ合いを経て現在は反転途上にある。

こうした長期の視点から改めてドル円の現在位置を確認すると、ゴールデンウイークに政府・日銀が介入に踏み切った「160円」という水準は、チャート上とても重要な水準であったことに気づかされる。

というのも、プラザ合意後の円高が短期間に猛烈なスピードで進んだことから、1990年4月につけた戻り高値の160円20銭を抜けると、プラザ合意前の262円80銭まで目ぼしいチャート上の節目がほとんど見当たらないのだ。

■為替介入で「ギリ」踏みとどまったドル円

為替レートは株式や債券などと異なり適正価格の試算が難しいため、市場参加者の多くは「トレンドに乗る(Trend is friend)」ことで利益を得ようとする。

こうした為替市場の性格から、重要なチャートポイントを抜けると明確なトレンドが形成されることで、相場に大きな推進力が生まれることが少なくない。

このため、ドル円が160円20銭のチャート上の節目を抜けて、明確な「円安ドル高トレンド」が確認されると、プラザ合意前のドル高値である262円80銭を目指す、「超円安相場」が始まっても決して不思議ではない状況だった。

まさに、奈落の底へと突き落とされる直前に踏みとどまり、「地獄の窯」の中を覗きかけた格好だ。そう考えると、当局の担当者が連休返上で為替介入にいそしんだのも、やむを得なかったと言えそうだ。