他人の幸せが許せない…会社をダメにする「あれこれケチをつける人」の病理

AI要約

腐る職場環境を作る人々についての話題書『職場を腐らせる人たち』では、その精神構造や影響について詳しく解説されている。

精神分析の視点から、攻撃者との同一視メカニズムが職場での問題行動に及ぼす影響が明らかになっている。

具体的な事例を挙げながら、あれこれケチをつける人の背景や心理についても紹介されている。

他人の幸せが許せない…会社をダメにする「あれこれケチをつける人」の病理

 根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち5刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

 〈私は企業や金融機関などで定期的にメンタルヘルスの相談に乗っているのだが、そこでも職場を腐らせる人に関する苦情をしばしば聞かされる。もっとも、当の本人は自分自身の言動が周囲に及ぼす影響について自覚していない場合がほとんどで、面談の際も「悩んでいることはありません」「何も問題はありません」といった答えが返ってくることが多い。これでは、みな頭を抱えるはずだと妙に納得する。

 長年にわたる臨床経験から痛感するのは、職場を腐らせる人が一人でもいると、その影響が職場全体に広がることである。腐ったミカンが箱に一つでも入っていると、他のミカンも腐っていくのと同じ現象だ。

 その最大の原因として、精神分析で「攻撃者との同一視」と呼ばれるメカニズムが働くことが挙げられる。これは、自分の胸中に不安や恐怖、怒りや無力感などをかき立てた人物の攻撃を模倣して、屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムである。

 このメカニズムは、さまざまな場面で働く。たとえば、子どもの頃に親から虐待を受け、「あんな親にはなりたくない」と思っていたのに、自分が親になると、自分が受けたのと同様の虐待をわが子に加える。学校でいじめられていた子どもが、自分より弱い相手に対して同様のいじめを繰り返す。こうして虐待やいじめが連鎖していく。

 似たようなことは職場でも起こる。上司からパワハラを受けた社員が、昇進したとたん、部下や後輩に対して同様のパワハラを繰り返す。あるいは、お局様(つぼ ねさま)から陰湿な嫌がらせを受けた女性社員が、今度は女性の新入社員に同様の嫌がらせをする。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

 『職場を腐らせる人たち』では、「根性論を持ち込む上司」や「言われたことしかしない若手社員」、「完璧主義で細かすぎる人」や「相手によって態度を変える人」など15の具体的な事例を紹介し、その精神構造と思考回路を分析している。

 例えば、「あれこれケチをつける人」とはどんな人だろうか。

 〈ある家電メーカーでは40代の男性社員があれこれケチをつけるので、周囲は辟易している。たとえば、新しいプロジェクトを立ち上げようと頑張っている後輩に「どうせうまくいかないよ」「やるだけ時間の無駄」などと言う。そのプロジェクトがうまくいき、みな喜んでいても、「これが続くかどうかわからない」「次はそんなに簡単じゃない」などと水を差す。いつも他人の喜びを台無しにして、やる気をくじくそうだ。

 この男性が何にでもケチをつけるのは、今に始まったことではない。5年ほど前にも、同期のトップで課長に昇進した男性社員に「どうせ課長になっても、責任ばかり重くなって、給料はあまり上がらない。大変な思いをするだけだよな」と言ったことがあるらしい。それだけではない。「管理職になったことをきっかけにうつになる『昇進うつ』というのがあるそうだから、気をつけないとな」と心配そうな素振りも見せたという。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

 こうした人の背景には、根底に潜む羨望、他人の幸福が我慢できない怒りがあると分析する。周囲に「あれこれケチをつける人」がいる人は注意されたい。

 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。