1隻400億円を突破 大型ガス運搬船の価格が過去最高値を記録

AI要約

LNG(液化天然ガス)船の船価が過去最高値を記録し、海運大手が積極的に投資を行っている状況が明らかになっている。

新造船価の高騰や中古船価の上昇には、鋼材や資機材価格の上昇だけでなく、カタールが多くの発注枠を抑えたことなどが影響している。

船価上昇に伴い投資額が膨らんでいるが、海運大手はリスクを回避するために用船料の長期契約などを行っており、金融機関も積極的に対応している。

1隻400億円を突破 大型ガス運搬船の価格が過去最高値を記録

 LNG(液化天然ガス)船の船価上昇が顕著となっている。米ベソン・ノーティカルによると、17万4000立方メートル型LNG船の新造船価は2億6930万ドル(1ドル=150円換算で約400億円)を付け過去最高値を記録した。日本の海運大手は安定収益が見込まれるLNG船事業を成長分野と位置付け、積極的に投資を行っているが、船価や米ドル金利の上昇で投資額が膨らんでいる。今年に入り5カ月間で発注されたLNG船は、前年同期の34隻の2倍以上に当たる78隻に到達した。

 海運会社向け運航管理システムなどを提供するベソンは11日、LNG船の船価や発注動向などについて発表した。

 LNGトレードの標準船型である17万4000立方メートル型の足元の新造船価は、前年同期の2億5760万ドルと比べて4・5%高い。3年前の1億8660万ドルと比べると4割強上昇した。

 新造船価の高騰は、鋼材や資機材価格の上昇に加えて、限られたLNG船の発注枠の多くをカタールが抑え、新規発注が困難だったことが押し上げたとみられる。

 ベソンによると、中古LNG船の船価相場も上昇している。船齢20年の14万立方メートル型LNG船の船価は、年初時点の6285万ドルから7240万ドルに15%(約1000万ドル)上昇した。

 LNG船の発注が増えたのは、LNGの増産計画に合わせ、大規模な新造計画を進めるカタールのエネルギー会社が造船契約を正式に結んだことが主因だ。

 新造発注されたLNG船の内訳は、カタールのエネルギー会社が手当てしたものが44%を占めた。アラブ首長国連邦(UAE)の海運会社が調達したものも13%あった。中国船社による発注が9%で続いた。

 船価上昇などを受け、川崎汽船は2022―26年度のLNG船への投資額を前計画の1600億円から2500億円に引き上げた。船腹需要が旺盛なほか、船価やドル金利が上昇しているためだ。

 船価が大幅上昇し投資額は膨らんでいるが、海運大手はコスト上昇に見合った用船料の長期契約を確保し、船価上昇などのリスクを回避している。金融機関はLNG船向けの旺盛な資金需要に対応するため、シンジケート・ローン(協調融資)も活用している。