「モンスト」でインドへ 海外進出加速するMIXIの狙い
日本のスマホゲーム市場が厳しい状況にある中、MIXIはインド市場に進出する方針を示す
インドではゲームのリテラシーが高くないが、スマホゲームの普及が進んでおり、MIXIが展開する「モンスト」が注目されている
MIXIは円安の影響も考慮しながら海外展開を加速し、ニッチなカルチャー系事業を強みとしている
◇MIXI・木村弘毅社長に聞く(1)
IT大手のMIXI(ミクシィ)が海外進出を加速させている。主力の人気スマホゲームのモンスターストライク(モンスト)でインドに進出する方針だ。また子供の写真や動画を共有するアプリ「家族アルバム みてね」は欧米を中心に利用者を伸ばしている。海外事業を展開するその理由をMIXIの木村弘毅社長に聞いた。【毎日新聞経済プレミア、山口敦雄】
――主力の「モンスト」でインド市場に進出する方針です。
◆日本国内のスマホゲーム市場は非常に厳しい状況だ。国内の人口減少が進み、新しい顧客を取り込むこともできない。いわゆるレッドオーシャン状態のなかで、スマホゲーム各社はともに苦戦している。
一方、世界を見渡したところで私たちの遊びの需要が全くないのかというとそうではない。なかでも一番に目をつけたのがインドだ。インドは出生率が高く人口も14億人いる。スマホの普及率も高く非常に魅力的な市場だ。
――インドでスマホゲームは普及していますか。
◆実はインドはまだゲームのリテラシー(知識や能力)がそれほど高くない。家庭用ゲーム機で遊んだことがほとんどなく、デジタルゲームに触れるのがスマホからという人が多い。
またインドには家族だけでなく友達とも密度濃くコミュニケーションする文化がある。友達と同時に遊べるモンストは日本で10年前に誕生したゲームだが、「タイムマシン戦略」のように日本で成功したゲームをインドでも喜んでもらえるのではないかと考えている。
――実際に社長もインドに行ったそうですが、インドの魅力は何ですか。
◆ムンバイとベンガルール(バンガロール)に行ったが、街に活気があり若さがある。現地のゲーム企業への投資を検討するなかで、数人の起業家とも会ったが若い経営者が多く、「自分がインドをこう変えたい」と熱っぽく話していた。ものすごく刺激を受けた。
――ゲームをインド向けに改良するのですか。
◆インドではアニメやマンガなど日本のコンテンツが人気だ。なるべく日本のモンストのまま持って行きたい。モンストは見方を変えれば日本のキャラクターIP(知的財産)の見本市だ。「鬼滅の刃」や「ワンピース」など日本の人気アニメなどと月1回の頻度でコラボしている。インドを皮切りに東南アジア、世界に展開したい。
――「みてね」が欧米で好調です。
◆「みてね」のグローバル名は「FamilyAlbum(ファミリーアルバム)」だが、国内よりも欧米を中心に海外で利用者が伸びている。現在、全世界で2000万人以上の会員がいる。人気商品の写真印刷サービスは現状では日本で印刷して配送しているが、現地の製造工場で生産し、配送するサービスを欧米から始める予定だ。
◇海外進出の背後に「円安」
――海外進出を加速させる理由に円安の影響はありますか。
◆円安の影響はある。やはりキャッシュフローを円ベースで考えると経営上の大きなリスクだ。現状では私たちの主要な顧客は日本国内で円を通貨としている人たちだ。豪州でスポーツベッティング(賭け)事業をしているので、米ドルや豪ドルのキャッシュフローを生むことが重要になってくる。
――円安は経営上デメリットの方が多いですか。
◆現状はメリットよりデメリットの方が多い。スポーツ事業では運営するサッカーやバスケットボールのプロチームの外国人選手獲得にあたり円安はリスクだ。海外製サーバーの利用コストが増加しており、外国に進出する際のマーケティングコストが高くなっている。そこで現地通貨を獲得し、現地で再投資するサイクルに早く持っていかないと厳しい。
――海外進出で気を付けていることはありますか。
◆ニッチなところから攻めるのがポイントだ。ネット通販などは海外進出の難易度は高いだろうが、ゲームなどカルチャー系事業は、ライバルにあまり気が付かれずに海外進出できるメリットがある。またゲームは簡単に現地企業にまねられない。そこがカルチャー系のビジネスの強みだし、海外でも伸ばせる領域だと考えている。