自宅用に「ついで買い」、同じ商品を「共感買い」 変わるお中元

AI要約

百貨店のお中元商戦が本格化しており、贈る対象が仕事関係だけでなく友人や自分自身への贈り物も増えている。

市場は縮小傾向だが、ギフト市場全体は拡大しており、百貨店も若年層のニーズに応える取り組みを強化している。

消費者は自宅用にも贈り物を買う「ついで買い」や共感買いを楽しむ傾向があり、インターネットを通じたお中元の注文も増えている。

自宅用に「ついで買い」、同じ商品を「共感買い」 変わるお中元

 百貨店のお中元商戦が本格化している。近年は仕事の取引先や親類への贈答だけでなく、親しい友人らへの気軽な贈り物、自分へのご褒美といったニーズも生まれている。

 ◇「価格高騰のオリーブ油を」

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は5日、日本橋三越本店(東京都中央区)に特設コーナーを開設。開店前には従業員が浴衣やそろいのはっぴを着て「エイエイオー」と気合を入れた。

 午前10時に開店すると、商品を求める客が続々と来店。初日の来店客は、既に買う商品が決まっているケースが多く、受付カウンターはすぐに順番待ちの行列ができた。インターネット販売が増える中、年配客が多い三越では店舗需要も約半数と根強いという。

 千葉市の主婦(70)は、かつては職場の上司ら6、7人に贈っていたというが、最近は親類や親しい人の3、4人に落ち着いたという。予算はそれぞれ1万円で「年配の人もいるので健康によい、最近の物価高で価格が高騰しているオリーブオイルを選ぼうと思う」と話した。

 ◇市場縮小 若年層取り込みを

 市場調査会社の矢野経済研究所によるとお中元市場は、2019年の7210億円から24年に6560億円まで縮小する見通しだ。お歳暮市場も縮小が続く。一方で、ギフト市場全体は20年の9兆8905億円から拡大し、24年は11兆20億円の見込みだ。同社は「儀礼的なギフトとしては縮小傾向にある一方、親密な間柄などでは重要度を増している」と分析する。

 百貨店もこうした消費者ニーズを捉えようと商品やサービスを工夫する。

 三越伊勢丹HDは今年、若年層の取り込みを意識した商品を強化した。子供向け工作番組のクリエーターらがデザインしたカラフルな箱が目を引く「OH!SUMMER」(3000~5000円台)は、中に人気の菓子を詰め、食べ終わっても箱で遊べるようにした。企画を担当した同社の古口晃久さんは「自宅にお中元が届くという経験がない若い人も多い。届いてふたを開けたときのわくわく感を楽しんでもらいたい」と意気込む。

 お中元は、普段手にしない商品を楽しむ「プチぜいたく」の機会でもあるようだ。同社によると、お中元を贈る際に自宅用も買う「ついで買い」や、贈り先と同じ商品を自分用にも買って感想を共有する「共感買い」も増えているという。

 ◇物価高対策

 「好きなものを手軽にお取り寄せする傾向は、最近のお中元にも見られる」と話すのは、そごう・西武の担当者だ。インターネット上でのお中元商品の販売は、自分へのご褒美や、時期を問わないカジュアルな贈り物など多様なニーズを生んでいるという。同社は自宅での消費や足元の物価高を意識し、総菜や飲料など普段使いの商品を集めた「ご自宅用特別お買い得品」コーナーをネット専用で設けている。

 ◇「買いやすさ」で売り上げ増

 お中元・お歳暮市場が縮小傾向の中、「買いやすさ」が支持され、売り上げを伸ばしているのが京王百貨店だ。東京西部を中心に計8店舗ある小型店は23年のお歳暮の売り上げが計前年比1割増と好調だ。同社の担当者は「都心まで行かずに百貨店のギフトを贈れるとして、新規の利用が大きく伸長した」と明かす。

 こうした来店客をネットへ誘導する施策も展開。高齢者など操作に不慣れな人でも利用できるよう、パソコンやスマートフォンでの購入を遠隔サポートする手厚いサービスも導入して売り上げ増を図る。【嶋田夕子】