高齢者差別、韓国で拡大「年金虫」「入れ歯カチカチ」厳しい視線、背景に生産性の問題

AI要約

韓国で広がる高齢者に対するエイジズム(年齢差別)の背景として、経済的な問題が挙げられる。

若者が高齢者に抱くイメージには偏見があり、知識や体験を通じて肯定的な変化が見られる。

韓国の若者は就職や結婚の難しさから、高齢者に対して否定的で攻撃的になっている傾向がある。

高齢者差別、韓国で拡大「年金虫」「入れ歯カチカチ」厳しい視線、背景に生産性の問題

儒教の影響を受け年長者を敬う国だった韓国で、高齢者に対するエイジズム(年齢差別)が広がっている。そこまで広がっているのはなぜか、日本とはどこが違うのか。家族社会学が専門でエイジズムについて研究している、金珠賢(キム・ジュヒョン)忠南大学教授に聞いた。(聞き手・坪谷英紀)

忠南大学教授(家族社会学)

1970年生まれ。エイジズムと高齢者の人権問題について研究している。早稲田大学と京都大学の研究員として、日本と韓国の比較や、日本の地域高齢者ケアについても研究した。韓国社会学会副会長。

韓国ではエイジズムという言葉自体はまだ知られていませんが、高齢者差別、老人嫌悪という言葉は一般的です。お金だけがかかり、何も生み出さない「年金虫」という言葉があります。また、「トゥルタック」という言葉もあります。入れ歯がカチカチなることを差しますが、それが老人嫌悪の象徴の言葉として使われています。

その差別が起きる要因として最も大きいのが、経済的な問題です。韓国は社会の変わるスピードがとても速い。社会学の世界では「圧縮的な社会」といいます。資本主義化と産業化が急速に進んだために、生じる問題にじっくり取り組むひまがなかった。韓国では高齢者を敬う社会だったのが、生産的でない高齢者は価値がないとみなされるようになった。

私は若者が高齢者に抱くイメージを調査し、昨年論文を発表しました。若い人に高齢者と聞いて思い描くものを写真に撮ってもらい、その理由を聞き取りました。最初は高齢者に対して否定的でしたが、次第に肯定的になった。

ほとんどの若者は祖父母と暮らしておらず、高齢者についてそもそも知らないのです。知らないということは偏見につながり、差別を生みます。それが、体験や知識を得ることによって良いイメージへと変わっていきます。

自分自身の20代のイメージがいい人は差別をしにくいというデータがあります。だが、いま韓国の若い人をとりまく状況はさまざまな面で悪い。就職ができない、結婚もできない。さらには結婚したくない、出産したくないと思うようになっている。

超高齢化社会に向けて高齢者を支えなければならない若者たちにとって、自分の生活に悪い影響を及ぼす高齢者に対しては否定的、攻撃的になるのです。