自動車業界で長年働いてきた私が、ぶっちゃけ「自動運転バス = 実用化まだ遠い」と思うワケ

AI要約

自動運転バスの実証実験に参加した筆者が、公道での走行環境に違いに驚く。

レベル2の自動運転システムを搭載したバスの実用化には課題が多いことを実感。

実証実験中に自動運転から手動運転への切り替えが多く、信号や急な状況での対応が難しいことが明らかになった。

自動車業界で長年働いてきた私が、ぶっちゃけ「自動運転バス = 実用化まだ遠い」と思うワケ

 自動車業界に就職して二十余年の筆者(小城建三、自動車アナリスト)は先日、自動運転バスの実証実験に参加した。公道での実験に参加したのは初めてだったが、自動運転バスのすぐ横を他の車やバイクが並走し、歩道には人や自転車が行き交うなど、クローズドの走行環境とはまったく違った。

 そして、自動運転バスが実用化されるまでには相当な年月がかかることを実感したので、全国各地で行われている自動運転バスの実証実験の課題について、今回実際に体験したことを踏まえて述べてみたい。

 試乗時間は15分、走行距離は約1kmで最高速度は時速20km程度だった。「レベル2」の自動運転システムが搭載されて運転者が同乗し、特定条件下でハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作を自動で行うと主催者から説明があった。

 レベル2とは、乗用車では部分運転自動化と解釈され、ハンドルから手を離すハンズオフ状態での走行が可能なレベルである。

 走行コースは、複数のレーンがある一般道で、交通量は比較的多いように見受けられた。コースの途中にはいくつか信号があり、左折もあったため、そうした場面で自動運転システムがどのように作動するかについて最も関心を寄せていた。

 試乗した自動運転バスは、小型バスの部類に入るコンパクトな車両だった。前方と後方にLiDARやカメラ、センサーなどが複数搭載され、自動運転走行が可能な車両であることは一目瞭然だ。車室内にも多くの機材が搭載され、座席付近に設置されたモニターには、バスの周囲で動く人や車両が映し出され、各種機器を通して得られた情報がリアルタイムで表示されていた。

 運転手とラップトップコンピューターを操作する関係者のふたりが同乗して、まずは手動運転からスタートした。一般道に入ったところで

「手動運転から自動運転に切り替えます」

とアナウンスがあり、公道での実証実験がスタートした。自動運転で走りだしてまもなく左折があったが、左折寸前でシステムトラブルがあり、手動運転に切り替わってしまった。システム復旧のために停車後、自動運転走行が再開されてしばらくは直線道路が続いたが、自動運転から手動運転に切り替わったシーンが意外にも多かったのにはとても困惑してしまった。

 走行中に手動運転に切り替わったシーンは計4回で、隣の車線から前方へ車が侵入(1回)、前方で停車している車両を追い越し(2回)、赤信号のため停車(1回)だった。あらかじめ走行コースは決まっていたので、信号がある箇所は把握していたはずだが、レベル2では、赤信号を検知して停車するまでを実現するのは難しかったようだ。

 走行コース終盤にバスが停車するポイントに差し掛かったところで、前方で人が道路を横断したためか、異常な急ブレーキがかかった。このあたりはソフトのアルゴリズム調整の問題かもしれないが、約15分の走行体験を終えた率直な感想は、

「自動運転バスの実用化はまだまだ先のこと」

で、何とも後味の悪いものだった。