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手放しで喜んでよいのか? いまの賃上げは日本人が自分で負担しているものなのに
2023年春闘から賃金上昇が目立つものの、消費者物価上昇により実質賃金は上昇せず、スパイラル的な賃金・物価上昇の危険性がある。
日本経済はインフレや円安による影響を受け、輸入価格の上昇が見られたが、賃金上昇の影響で実質賃金は下落傾向にある。
賃上げが転嫁される中、国内での賃上げが消費者物価に影響を与える変化が起き始めており、これが望ましいかどうかが議論されている。
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2023年春闘から賃金上昇が目立つようになった。しかし、これは、賃上げを販売価格に転嫁することによって実現しているものだ。賃上げによって消費者物価が上昇するため、実質賃金は上昇しない。この状況が進めば、スパイラル的な賃金と物価の上昇に陥る危険がある。
この数年間、日本経済は大きな変動を経験した。
まず、世界的なインフレと円安によって、輸入価格が上昇した。これが消費者物価を引上げた。このような動きが、2022年から23年にかけて生じた。
23年に春闘の賃上げ率が高まり、賃金が上昇し始めた。しかし、物価上昇率の方が高いので、実質賃金は下落を続けた。
以上が第一段階だ。
ここまでは、アメリカのインフレに端を発した玉突き的な変化だ。日本から見ると、コストプッシュ・インフレだ。
それは、国民生活を貧しくするという意味で大問題だが、経済メカニズムとしては理解しやすい。少し詳しく言うと、次の通りだ。
企業は、原材料価格の高騰分を販売価格に転嫁する。これは、これまでも行われてきたことであり、日本の消費者物価はそれによって上昇した。今回は輸入物価の上昇率が非常に高かったために、はたして完全な転嫁をできるかどうかが、当初は疑問視されていた。
しかし、実際には、原価上昇分をほとんど消費者物価に転嫁できた。大企業は取引上優位な立場にあるので、ほぼ完全に転嫁できただろう。このため、企業の粗利益(売上げー原価。なお、これは付加価値にほぼ等しい)が増えて、賃上げが可能になった。
また、賃上げを販売価格に転嫁するという見通しもついたのだろう。少なくとも、大企業についてはそうである。
ところが、2003年の春頃から、状況が変化した。世界的な物価高騰が収まったために、輸入物価が2023年3月から低下し始めたのだ。それにもかかわらず、国内物価は上昇を続けた。
このプロセスを理解するのは簡単ではない。なぜ輸入物価が低下しているにもかかわらず、消費者物価が低下しないのか?
それは、賃上げが販売価格に転嫁されたからだと考えられる。
少なくとも大企業については、それが行われているだろう。また、食料や宿泊費については、中小・零細企業も含めて、販売価格への転嫁が行われていると考えられる。こうして、賃上げが消費者物価に影響を与えるようになったと考えられる。
つまり、これまでのように海外のインフレが国内の消費者物価に転嫁されるのではなく、国内での賃上げが消費者物価に転嫁されるとプロセスに変化してきている。
これが望ましいかどうかについての判断が重要だ。日本政府は、このプロセスを進めることが望ましいとして、中小企業も価格転嫁ができるよう、企業を指導している。政府や経済界以外にも、このプロセスは「物価と賃金の好循環」であリ、望ましい動きであるとして、積極的に進めるべきだとする意見が強い。
こうした状況を背景として、2024年春闘における賃金上昇率は、さらに高まった。