NATO事務総長人事やウクライナ支援策を協議 非公式外相会合、露への越境攻撃の是非も

AI要約

北大西洋条約機構(NATO)の非公式外相会合がプラハで開かれ、次期事務総長の人事をめぐる混乱やウクライナ支援策の具体化が話し合われる。

事務総長選出を巡り、加盟国の意向が分かれる中、ルーマニアのヨハニス大統領が立候補意向を示し、オランダのルッテ首相との争いが続く。

ウクライナへの大規模支援策に関しては具体的な仕組みがまだ固まらず、加盟国による資金拠出の分担が焦点となっている。

【プラハ=黒瀬悦成】北大西洋条約機構(NATO)の非公式外相会合が30、31日、チェコのプラハで開かれる。7月に米ワシントンで開催される首脳会議を前に、10月に任期を終えるストルテンベルグ事務総長の後任人事や、ロシアに侵略されたウクライナに対する今後5年間で最大1000億ユーロ(約16兆3600億円)の大規模支援策の具体化について話し合う。

次期事務総長の人事をめぐっては、NATO加盟32カ国のうち米英仏独を含む29カ国がオランダのルッテ首相を推している。ところが3月になってルーマニアのヨハニス大統領が立候補の意向を表明し、加盟国の間で困惑が広がった。

事務総長の選出は加盟国による全会一致が原則だ。ヨハニス氏への支持を表明したのはハンガリーのみ。態度を決めていないスロバキアを除く残りの加盟国は同氏に立候補を辞退するよう圧力をかけている。

ヨハニス氏に関しては、NATO事務総長を辞退する見返りに、6月6~9日の欧州議会選挙を受けた欧州連合(EU)や欧州委員会の人事で要職を確保するための駆け引きを展開しているとの指摘もある。

一方、ストルテンベルグ氏が4月の外相会合で提案したウクライナへの大規模支援策に関しては、加盟国が資金を出し合って基金を創設することが検討されている。ただ、加盟国がどのような基準で拠出額を分担するかなど、具体的な仕組みは固まっていない。

欧州メディアによると、バルト三国のエストニアは加盟各国が国内総生産(GDP)の0・25%をウクライナ支援に拠出するよう提唱。ただ、加盟国の間からは財政負担の増加を懸念する声も出始め、最終的には支援の規模が縮小する可能性も指摘されている。

米欧がウクライナに供与するミサイルなどをロシア領内への攻撃に使用するのをNATOとして認めるかどうかも議題の一つだ。

ウクライナの隣国ポーランドのトムチク国防副大臣は29日、地元ラジオとの会見で、ポーランドがウクライナに供与した兵器について「何らの使用制限を課さない」と述べ、ロシアへの越境攻撃に使うのを容認する考えを明らかにした。

ロシアへの越境攻撃をめぐっては主要な兵器供与国である米国とドイツが慎重姿勢を崩しておらず、議論の行方が注目される。