台湾威嚇の代償「高まる米の警戒感」 中国にもジレンマ 東京外国語大・小笠原欣幸名誉教授に聞く

AI要約

台湾の民進党政権に対する中国の圧力が高まっており、台湾周辺で軍事演習が行われている。中国は台湾独立派と見なし、対立が深まっている。

中国は頼清徳政権が中台は別の国だと述べたことに反発し軍事演習を実施しているが、台湾の世論は台湾アイデンティティーの高まりを示しており、内部分裂を画策する可能性がある。

台湾政治における情勢が緊迫しており、今後の中台関係に注目が集まっている。

台湾威嚇の代償「高まる米の警戒感」 中国にもジレンマ 東京外国語大・小笠原欣幸名誉教授に聞く

 台湾で20日に発足した民主進歩党(民進党)の頼清徳政権を「台湾独立派」と見なす中国は、台湾周辺で軍事演習を実施し、圧力を強めている。民進党は1月の立法委員(国会議員)選で少数与党に転落しており、外交面にも影響が出そうだ。台湾政治に詳しい東京外国語大の小笠原欣幸名誉教授に中台関係の展望を聞いた。 (聞き手は台北・後藤希)

 中国は頼氏が20日の就任演説で「(中台は)相互に隷属しない」という表現で中台は異なる国だと述べたことに反発している。

 中国軍が23日に始めた軍事演習は規模の見極めが必要だ。これまでの演習の延長線上か、質的レベルを上げたものかで意味は大きく異なる。

 中国軍は2022年にペロシ米下院議長(当時)が訪台して以来、日常的に台湾への軍事的威嚇を行っている。台湾の人々は良くも悪くも軍事演習に慣れているので、震え上がらせるのは簡単ではない。中国がレベルを引き上げた軍事演習を行えば米国の警戒感がさらに高まり、日米の同盟強化が進んで中国は一段とやりにくくなる。台湾威嚇のさじ加減は中国にとっても矛盾をはらむものになる。

 中国は今後も頼政権への揺さぶりを続けるだろう。対中融和路線の立法院(国会)第1党、国民党や第三極の台湾民衆党に働きかけ、蔡英文前政権が制定した中国に不利な法律を改正させるなどして台湾の内部分裂を画策することが考えられる。台湾の政治状況を利用し、次期総統選まで4年間かけて頼氏を追い込めばいいと判断しているのではないか。

 だが、頼氏の演説の背景には「台湾アイデンティティー」の高まりがある。台湾の世論調査では7割以上が「海峡両岸は二つの異なる国家」と捉えていると回答し、「台湾は中国とは別の国」だという意識が強まっている。頼氏は多数派の意見を代弁したに過ぎない。中国は台湾の世論を直視する必要がある。