「柔らかな反骨心」 関口宏という生き方/最終回 強権支配下で『サンデーモーニング』はなぜ変わらなかったのか? 青木理

AI要約

日曜朝の超人気番組『サンデーモーニング』を長年率いた関口宏氏の軌跡を、出演者でもある闘うジャーナリスト・青木理氏がたどる大反響の異色評伝。

2023年の3月、野党議員が独自に入手し、明るみに出した総務省の内部文書が一大政治問題と化した。

文書が孕む問題点は他にも多いが、時の政権幹部がメディア報道への露骨な政治介入であり、言論や表現の自由を保障した憲法にも違背しかねない。

「柔らかな反骨心」 関口宏という生き方/最終回 強権支配下で『サンデーモーニング』はなぜ変わらなかったのか? 青木理

 日曜朝の超人気番組『サンデーモーニング』を長年率いた関口宏氏の軌跡を、出演者でもある闘うジャーナリスト・青木理氏がたどる大反響の異色評伝。最終回は、強権政治の専横下でも番組姿勢を曲げなかった関口氏の「自然体の抵抗」とは何か、その核心に迫る。

◇テレビ・ジャーナリズムの矜持を受け継ぐのは私たちだ

 2023年の3月、野党議員が独自に入手し、明るみに出した総務省の内部文書が一大政治問題と化した。

 ご記憶の方も多かろう、70頁(ページ)以上に及ぶ文書に刻まれていたのは「一強」政権下の14~15年にかけての出来事である。「無駄な抵抗はするなよ」「俺の顔をつぶすようなことになれば、首が飛ぶぞ」。総務官僚に下卑た恫喝(どうかつ)を浴びせた首相補佐官は、放送法の解釈変更を執拗(しつよう)に迫り、ついにはこんな台詞(せりふ)を口にしたと文書は記録していた。

「明らかにおかしい番組がある」「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」

 文書が孕(はら)む問題点は他にも多いが、時の政権幹部が「けしからん番組は取り締まれ」などと口走り、ましてや放送法を所管する総務官僚に迫るのは、控えめに評してもメディア報道への露骨な政治介入であり、言論や表現の自由を保障した憲法にも違背しかねない。そして、「けしからん番組」の〝筆頭〟として文書で幾度も名指しされていたのが関口宏さん率いる『サンデーモーニング』だった。

 すでにコメンテーターとして番組に出演していた私は、あまりにあからさまな首相補佐官の言動に憤り、呆(あき)れはしたものの、実のところ驚きはさほどなかった。これもあらためて記すまでもなく、「一強」政権とその与党は自らの意に沿わぬメディア報道への圧力や恫喝を盛んに繰り返していたからである。

 政権与党の自民党が民放各局に文書を送りつけ、番組の街頭インタビューやコメンテーターの人選にまで言及して選挙報道の「中立公平」を要求したのは14年11月。その半年後にも自民党はNHKと民放の幹部を呼びつけて異例の「聴取」に乗り出し、16年2月には「政治的公平」に反する報道を繰り返せば「放送法に基づく電波停止もありえる」と総務相が国会で堂々言い放った。