サウジ国王、肺炎で健康悪化…実権者ビン・サルマン皇太子の継承が有力

AI要約

サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジズ国王が肺炎と診断され、病院で治療中。息子であり王位継承序列1位のムハンマド・ビン・サルマン皇太子の権力が一層強まる可能性がある。

サルマン国王は2020年に手術を受けて以来不調が続き、ビン・サルマン皇太子が国政の相当部分を担っている状況。息子は王位継承序列を破る形で皇太子に就任し、王室内での権力基盤を確立。

ビン・サルマン皇太子は粛清を行いながら自身の地位を強め、国家建設事業などへの権限を与えられる一方、国際社会からはその手法に厳しい疑問がなされている。

サウジ国王、肺炎で健康悪化…実権者ビン・サルマン皇太子の継承が有力

サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジズ国王(88)が肺炎と診断され、病院で治療中という報道があった。サルマン国王の健康が悪化し、王位継承序列1位の息子ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(39)に世間の耳目が集まっている。

20日(現地時間)のCNNとサウジ国営SPA通信によると、サルマン国王の健康が悪化し、ビン・サルマン皇太子は19日、日本訪問日程を突然延期した。訪日の延期は2022年11月に続いて今回が2回目となる。その代わり岸田文雄首相はビン・サルマン皇太子と21日、35分間のテレビ会談をし、原油供給とクリーンエネルギー分野で協力を強化することにした。

ロイター通信によると、サルマン国王は2020年に胆嚢除去手術を受けてから不調が続き、最近は高熱と関節痛に苦しんでいた。

このためサウジの実権者ビン・サルマン皇太子の権力がより一層強まるという分析が出ている。2015年に王位に就いたサルマン国王はすでにサウジの国政の相当部分を息子に任せている状態だ。

ビン・サルマン皇太子はサウジの長い慣行を破って王位序列1位になった人物だ。サウジは兄弟間の王位継承が原則だったが、サルマン国王はこうした王位継承序列を破って息子を皇太子とした。

サウジは初代イブン・サウード国王が死去した1953年からサルマン国王の即位まで62年間、兄弟継承制度を受け継いできた。長男が相続をすれば一つの部族が権力を掌握して体制が不安定になるという懸念のためだった。

こうしたルールを破ったのはサルマン国王が50歳で得た息子ビン・サルマンだった。ビン・サルマンは国王の3人目の妻から得た6人目の息子であり、王座とは距離が遠かった。王室の後継者の一人にすぎなかったビン・サルマンは留学をした他の兄弟と違ってサウジで大学を卒業し、いつも国王のそばにいた。またいくつかの事業で頭角を現し、父の信頼を得たという。

◆ホテル監禁、粛清…国庫に1070億ドル還収

特にビン・サルマンは王位継承有力者を順に粛清しながら自身の地位を固めた。ビン・サルマンは皇太子となった2017年、王室の有力者数十人を不正・公権力乱用などの容疑でホテルに監禁した。そして財産献納の約束と忠誠誓約を受けた後に解放した。「宮中クーデター」と呼ばれたこの粛清は2019年初めまで続いた。

ビン・サルマン皇太子が財産献納約束を受けて国庫に還収した金額は1070億ドル(約16兆7000億円)。この時期からビン・サルマン皇太子は何でもできる「ミスターエブリシン」と呼ばれた。2020年にもビン・サルマン皇太子はサルマン国王の弟アフメド・ビン・アブドル・アジズら王家の3人が「反逆謀議」をしたとして逮捕した。ビン・サルマンの叔父といとこの3人は王位継承の大きな障害だった。

ビン・サルマン皇太子の慈悲のない粛清に国際社会の目は厳しかったが、サルマン国王は息子に大規模な国家建設事業を任せるなど力を与えようとした。皇太子の「粛清」に国王が目をつぶったという評価もある。英ガーディアンによると、皇太子が発付した王室有力者逮捕状に直接署名したのもサルマン国王だ。

これに先立ち2022年、サルマン国王は伝統的に国王が務めてきた首相に皇太子を任命するなど自身の死後に備えて息子に権力を集中させてきた。ロイター通信は、高齢者のサルマン国王が自身が生きている間に息子の王位継承作業に着手したと分析した。

ビン・サルマン皇太子は2018年、米経済雑誌フォーブスが選定した「世界で最も影響力のある人物トップ10」に入って注目された。ビン・サルマン皇太子の財産は約2兆ドルと推算される。