「経済良好」でも大幅利下げ 雇用悪化阻止へ、大統領選控えたタイミング 米FRB〔深層探訪〕

AI要約

FRBは政策金利を0.5%引き下げ、インフレ鈍化と労働市場の減速を理由に挙げた。

パウエル議長は利下げを通じて経済の強さを維持し、雇用悪化を防ごうとする姿勢を示した。

FRBの大幅利下げに対する市場の反応は慎重なものであり、選挙に向けた政治的影響も議論されている。

「経済良好」でも大幅利下げ 雇用悪化阻止へ、大統領選控えたタイミング 米FRB〔深層探訪〕

 米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、政策金利について、通常の2倍となる0.5%の引き下げを決めた。成長率が2%を上回るなど「米経済は良好」(パウエル議長)な中での大幅利下げで、雇用悪化の芽を未然に摘む狙いがある。11月に大統領選も控え、政治的に微妙なタイミングで金融緩和へかじを切った。

 ◇力強いスタート

 「(利下げサイクルで)十分強いスタートを切った」。パウエル氏は連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、0.5%の利下げは「経済にとって正しいことだ」と強調した。市場では、FRBが底堅い景気を理由に、利下げ幅を0.25%にとどめるとの見方もあった。

 パウエル氏が大幅利下げの理由に挙げたのは、インフレ鈍化の進展だ。8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.5%上昇と、伸び率は3年半ぶりの低水準となった。インフレ率が持続的に低下する「確信が大幅利下げを可能にした」(パウエル氏)という。

 一時は約40年ぶりとなった歴史的な高インフレが落ち着く一方で、労働市場は明らかに減速している。6~8月の就業者増加人数は月平均11万6000人と、1~3月の同26万7000人の半分以下にとどまった。

 パウエル氏は利下げにより「経済と労働市場の強さを維持する」と説明。大幅利下げは雇用悪化阻止で「後れを取らないという決意の表れと受け取っても構わない」と言い切った。

 ただ、18日のニューヨーク株式相場はFRBの大幅利下げを好感することなく、逆に下落した。「景気が想定以上に悪化しているのではないか。どれくらい悪くなるか読み切れない」(市場関係者)との懸念が先行した。

 ◇ハリス氏は歓迎

 FRBの金融緩和への政策転換は、大統領選を11月に控える中、政治的には微妙な時期となった。利下げには景気押し上げ効果があり、バイデン政権のナンバー2で民主党候補のハリス副大統領に追い風になるとの見方もある。

 ハリス氏はFRBの政策決定を受け、「米国民にとって歓迎すべきニュースだ」との声明を早速出した。一方、共和党候補のトランプ前大統領は18日、ニューヨーク市内で記者団に対し、大幅利下げについて「経済が非常に悪いか、FRBが政治目的で行っているかだ」と不満げだった。

 パウエル氏は「FRBの仕事は米国民のために、経済を支えることだ」と強調。「経済以外のフィルターはかけていない」と不偏不党を訴えた。(ワシントン、ニューヨーク時事)