「完璧な睡眠環境」が逆効果?…韓国・研究チームが解明した高齢者の不眠メカニズム

AI要約

高齢者の不眠症についての研究結果が発表された。睡眠に対する過度な執着が不眠を悪化させる可能性があるという内容。

睡眠に対する非合理的な信念が強い人ほど脳波で覚醒時に増加するベータ波が高くなることが示された。また、ストレスに対処する能力が低下している人々はデルタ波とシータ波が増加する傾向がある。

高齢者の不眠を解消するためには、心をケアするアプローチが重要であり、認知行動療法などが効果的であるとの指摘。

「完璧な睡眠環境」が逆効果?…韓国・研究チームが解明した高齢者の不眠メカニズム

【09月18日 KOREA WAVE】良質な睡眠が健康に良いとされる一方で、眠ろうと努力することがかえって高齢者の不眠を悪化させる――こんな研究結果が韓国で発表された。年を取るにつれて睡眠時間が短くなり、良い睡眠を求める傾向が強まるが、過度な執着が不眠の原因となる可能性がある。

サムスンソウル病院精神健康医学科のキム・ソクチュ教授の研究チームは、2021年11月から2022年10月の間に不眠症を訴えた60歳以上の45人を対象に、睡眠に対する期待と不安が脳波に与える影響を調査し、その結果を「International Journal of Psychophysiology」に発表した。

研究チームは、62チャンネルの脳波増幅器を使用して参加者の脳波(qEEG)を測定し、睡眠状態や不眠症に対するストレス反応を同時に分析した。参加者の平均年齢は68.1歳で、全員が臨床的に有意な睡眠障害を訴え、軽度のうつ病や不安症状を示していた。認知機能は正常だった。

参加者の脳波は、一般的な高齢者が示す特徴とは異なり、特異なパターンを示した。

研究チームによると、睡眠に対する非合理的な信念(DBAS-16)が強い人々は、脳の全領域で覚醒時に観察される「ベータ波」が増加していた。特に「十分に眠れなければ翌日に支障をきたす」という信念や、「完璧な睡眠環境でなければ良い睡眠は得られない」という非合理的な信念が強い場合に、ベータ波が過剰に高くなることが確認された。これは、睡眠に対する不安が強く、眠れないことに対する認知的反芻(反復的な思考)が脳の覚醒を招いていることを示している。

さらに、ストレスに対処する能力が睡眠問題によって低下することも、脳波で確認された。ストレス状況下でどの程度睡眠が妨げられるかを調べる「睡眠反応性質問票(FIRST)」を用いた調査では、反応性が高い人々は脳全体でデルタ波とシータ波が増加する傾向があった。

デルタ波とシータ波は、通常は深い睡眠時に観察される。覚醒時にこれらが増加するのは、脳が活性化されず、ストレス対処能力が低下している証拠だと研究チームはみている。ストレスが不安を引き起こし、その結果として不眠が悪化し、再び睡眠に対する不安が高まるという悪循環が形成される。

キム・ソクチュ教授は「脳波測定により、高齢者の不眠をより立体的に把握できた。不眠を解消するためには、認知行動療法など、心をケアするアプローチが重要で、これによって初めて完全な睡眠を期待できる」と強調した。

(c)KOREA WAVE/AFPBB News