米大統領選討論会に勝利したカマラ・ハリスが「失ったもの」

AI要約

米大統領選の討論会でカマラ・ハリス副大統領が勝利し、トランプ前大統領は失敗。討論の内容や注目点について詳細に紹介。

ハリスの準備や表現力が勝因であり、トランプは不法移民問題を語る中で失言を犯し、支持者たちに批判された。

討論の結果から見える政治的状況や候補者の強弱、今後の選挙戦の展望について解説。

米大統領選討論会に勝利したカマラ・ハリスが「失ったもの」

初顔合わせで注目を集めた米大統領選の討論会は、カマラ・ハリス副大統領の勝利で終わった。だが彼女の「ある変化」のせいで一部支持層の心は離れたと、国際政治学者の三牧聖子氏は指摘する。

9月10日、2ヵ月後に迫った米大統領選に向けて、ABCテレビの主催で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領と民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の討論会がおこなわれた。両者の初の顔合わせで、最初で最後の討論会になるかもしれないとのことで高い関心が寄せられた討論会だったが、勝者はハリスだったといえるだろう。

最初は緊張からか硬さも目立ったハリスだが、徐々に自信に満ちた表情に変わり、時折笑顔を交えてカメラの向こうの視聴者に向かって語り続けた。

対するトランプは、ハリスのほうにほとんど目を向けず、中絶問題や議事堂襲撃事件など、ハリスがトランプを追及するかたちになる討論が続くと、その顔は強張り、ファクトチェックをすかさず入れる司会者2人への不満に満ちた表情をすることも多くなった。

討論会直後にCNNがおこなった視聴者調査では、ハリス勝利とする人が63%に及び、共和党寄りのFOXテレビの有権者調査でも、ハリスに軍配を上げる人が多かった。

討論会後、トランプは「最高」のパフォーマンスを自負したが、これには側近たちすら疑問を呈している。

陣営の関係者によれば、トランプはハリスとは初めてとなる討論会に向けて相当な準備を重ね、主たる戦略を、「ハリスが掲げる公約について、なぜ副大統領としてこの3年半の間に実現できていないのかを問いただす」ことに見定めていたという。

しかし終わってみれば、90分を超えた討論で、トランプのほうがハリスより発言時間は長かったにもかかわらず、副大統領としてのハリスの実績を問う展開をほとんどつくれなかった。それどころか、本来自分にとって有利に展開できるインフレや移民政策といった話題でも、拙劣な発言をして、ハリスの得点にしてしまう展開すらあった。

今回の大統領選では、南部のメキシコ国境を越えてやってくるビザを持たない不法移民の増加が大きな争点となっており、ハリスは副大統領として、その根本問題の解決を担当してきたが、結果を出してきたとはいえない。

バイデン政権発足後、急増した不法移民の数は最も多い時で1日1万人を超え、昨年10月、ジョー・バイデン大統領は国境沿いの壁建設に乗り出すことを決定した。しかし、これはまさに自分たちが不寛容の象徴として批判してきたトランプ前政権と同じやり方だ。

トランプは、こうした矛盾を突くことなどもできたはずだが、代わりに不法移民の危険さを強調しようとして、「オハイオ州に流入したハイチ移民が、住民のペットを食べている」といったSNS上で出回っている虚偽に言及し、あからさまに移民への憎悪を煽る発言をした。

この問題発言は、陣営関係者内でも致命的な失言として受け止められているという。