「中国通」の米副大統領候補ティム・ウォルズを、中国はどう見ているか

AI要約

米国民主党の副大統領候補に指名されたティム・ウォルズ氏は、中国で教師として活動し、中国通として知られる。中国メディアは彼の過去を取り上げているが、一部の詳細は伏せられている。

ウォルズ氏は1989年に中国を訪れ、天安門事件の影響を目撃した経験を持つ。中国ではポジティブな印象を受け、米国への留学を望む学生たちと接した。

現在、市知事として活躍中のウォルズ氏は「庶民派」として人気急上昇中であり、中国での経験も彼の個性を豊かにしている。

「中国通」の米副大統領候補ティム・ウォルズを、中国はどう見ているか

米民主党の副大統領候補に指名されたティム・ウォルズ氏は、天安門事件が起きた年に中国で教えていたり、新婚旅行先に中国を選んだりと、かなりの「中国通」とされる。そんな彼を中国政府や一般の中国人はどう見ているのか。作家の譚璐美氏が解説する。

11月の大統領選挙を控えて、米国ではいま、民主党の副大統領候補に指名されたティム・ウォルズ氏(60)が注目されている。

現在、ミネソタ州知事2期目を務めている彼は、ネブラスカ州で生まれた。高校時代に州兵に入隊登録して24年間を過ごした。州兵は、普段は民間の仕事や学業に従事するかたわら、州知事の指揮下で治安維持や災害救援などにあたる。戦争になれば、連邦政府の指揮下に入り、即時召集される予備役部隊でもある。

ウォルズ氏は入隊後、並行してネブラスカ州立大学に入学し、同僚教師と結婚して、妻の故郷であるミネソタ州に移り住み、高校の地理の教師になった。アメリカン・フットボールチームのコーチを務め、1999年にチームを初の州大会出場に導いた。

この8月の民主党全国大会で副大統領候補に指名された際には、アメフトチームの元選手たちが応援に駆け付け、コーチとして慕われていたことがうかがえる。

州兵としては、重砲の訓練を受けたが戦闘には参加せず、2001年に除隊。しかし同年、9.11同時多発テロが起きたのを機に、再び入隊したというから、よほど正義感が強く、穏やかななかに情熱を秘めた人なのだろう。

2005年に除隊。その後、ミネソタ州選出の下院議員となり、2018年に州知事に選出されて意欲的に改革に取り組み、2022年に再選された。目下、ウォルズ氏は「庶民派」として人気急上昇中で、「彼の微笑みは私のお父さんのよう」だと、親しみを持たれている。

今夏、ウォルズ氏が民主党の副大統領候補に指名されると、中国の官製メディアもさっそく取り上げ、彼には中国で教員経験があり、中国通であると報じた。もっとも、ウォルズ氏が天安門事件当時の民主化運動やチベットに対する人権擁護派だということは伏せている。

ウォルズ氏が中国へ行ったのは1989年で、まさに天安門事件の発生を中国国内で知り、北京の民主化運動の様子を目撃した人なのである。

同年春、ネブラスカ大学を卒業したウォルズ氏は、教職課程の実習のため、ハーバード大学が主催する「教員養成のための海外研修プログラム」に参加して、数人の米国人研修生とともに、中国・広東省仏山市へ派遣された。そして1年間、地元の高校で英語教育に携わり、米国の文化や歴史などを英語で紹介した。

米ラジオ「ボイス・オブ・アメリカ」の中国語サイトによると、のちにミネソタ州の地元紙の取材を受けたウォルズ氏は、中国での体験についてこう語ってる。

「これまでの人生で最も歓迎を受けました。現地の人々は反米感情などなく、米国は最高の国だと思っていましたし、学生は皆、米国へ留学したがっていました。彼らは中国では将来のチャンスがないと考えているのです」