「中国に寝返って諜報活動」の容疑で米国在住の中国民主活動家を逮捕、背信の裏にあった中国の容赦ない破壊工作

AI要約

訪問者:民主活動家が中国国家安全部と通じてスパイ活動を行った疑いで起訴された。

訪問者:天安門事件から35年後も反体制派への厳しい取り締まりが続く。

訪問者:反政府活動に失望した元活動家が弱みをつけられ、情報工作員への協力に至った背景。

 (譚 璐美:作家)

■ 中国の反体制派がいつしか「中国のスパイ」に

 ニューヨーク在住の民主活動家の唐元隽(タン・ユェンジュン)が、中国国家安全部の諜報活動に加担したとして、米国連邦検察庁(FBI)により逮捕、起訴された。

 米国のCBSネット(8月21日付)によれば、唐元隽は1989年の天安門事件で台湾へ逃亡し、米国で保護されて後、中国政府に反対して民主化運動の活動に参加してきた。しかし2021年、ニューヨークで行われた天安門事件の追悼記念活動に関する資料を中国の情報工作員に提供したほか、22年には中国系米国人の国会議員候補者の選挙活動と募金収集の資料を提供したとされる。

 23年7月、FBIは唐の所持していたパソコンと5台の携帯電話を押収。その中の1台に中国国家安全部の情報工作員との連絡内容の記録やオンライン銀行口座などが発見された。22年に情報工作員から手渡された携帯電話にはプログラムが仕込まれ、写真、スクリーンショット、音声記録など、全ての情報が中国側へ瞬時に転送されていたという。

 起訴状によれば、2018年、中国国家安全部の情報工作員が唐に接触し、米国に政治保護されたときの詳しい状況や、米国在住の中国民主活動家たちの活動資料などを提供する見返りとして、中国へ里帰りすることを許可した。

 唐は2019年から2023年にかけて、3度にわたり中国やマカオへ渡航して親族と面会し、報酬を受け取っていた。

 唐をよく知る民主活動家によれば、1989年の天安門事件の際、唐は中国東北部の労働者組織を作って北京の学生運動を支援したことで、中国で8年間投獄された。釈放後、自由を求めて台湾海峡を泳いで台湾へ渡り、米国へ政治亡命し、海外の民主化運動に参加した。

■ 35年経った現在も続く、天安門事件に関与した者への執拗な弾圧

 しかし長い年月の間に、唐は海外の民主化運動に失望し、意気消沈した。国内に残った兄と妹が困窮して病気になり、誰も面倒を見てくれる人がいないことにも、ひどく心を痛めていたという(「博訊」ネット、2024年8月22日付より)。

 中国の情報工作員はそうした唐の弱みに付け込んだのだろう。背景には中国政府の反体制派に対する熾烈な破壊工作がある。

 天安門事件は1989年、北京で起きた大規模な民主化運動を中国政府が武力で弾圧した事件だ。犠牲者は800人とも1500人以上とも言われるが、未だに中国政府は認めていないため、犠牲者の数さえ不明のままだ。

 事件当時、指名手配された学生や知識人、労働者ら100人以上が海外へ逃亡し、フランスや米国に政治亡命した。