ユキヒョウが住むカシミール ヒマラヤの紛争地でたくましく生きる野生に保護の手 世界行動学

AI要約

インドのカシミール地方で絶滅危惧種のユキヒョウが生息しており、その保護が急務となっている。

ユキヒョウの生息地であるラダックでは、過放牧や気候変動などの要因により環境が悪化し、ユキヒョウの生存が bedre threatened。

保護プロジェクトでは、過放牧の防止や人間との衝突機会の減少に取り組む一方、中印パキスタンの紛争地域での活動にも苦労している。

カシミールといえば何を思い出すだろう。毛織物のパシュミナ、ヒマラヤの風光明媚(めいび)、あるいは中国、インド、パキスタンの国境紛争といったところか。実は、ほかにも意外な顔がある。それは、野生のユキヒョウの生息地だということだ。

■インドで初の本格調査

ユキヒョウは、大型ネコ科動物で、これら3カ国を含む12カ国の高山帯などに約4千~6500頭が生息する絶滅危惧種だ。インド政府は今年1月、ユキヒョウに関する初の本格的な国内全土での生息調査報告書を発表した。

インドの生息数は推定718頭で、このうち7割近い477頭がカシミール地方インド支配地域の一つラダックに集中していた。

「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」によると、ラダックで生息が脅かされている要因は気候変動による環境の変化をはじめ、生息地の消失、獲物となる動物の減少、人間による駆除、密猟があるという。そんなユキヒョウを守るため、WWFインドと同ジャパンは数年前、保全プロジェクトに乗り出した。

■負の連鎖を断ち切れ

目標は人間との軋轢(あつれき)による悪循環を減らすことにある。パシュミナを生産するためのパシュミナヤギやヒツジといった家畜の放牧が増え過ぎると、草原が劣化する。これにより、家畜と野生草食動物の競合が激しくなり、ユキヒョウの獲物であるウシの仲間のバーラルやウリアルが減少。ユキヒョウは家畜を襲うようになり、人間の駆除に遭う。すると、家畜の過放牧がさらに深刻化し、ユキヒョウはますます減っていく。こうした負の流れを食い止めようというのだ。

このために取り組んでいるのが、住民に過放牧にならないよう放牧地の適正利用を理解してもらうことに加え、人間とユキヒョウの衝突の機会を減らす活動だ。住民に過放牧が持続可能な放牧地利用につながらないことを知ってもらい、家畜の防御柵を試験導入したり、環境と野生動物の保護・調査に携わる若者を育成する「マウンテン・ガーディアン」計画を始めたりしている。

しかし、こうした取り組みには、中印、パキスタンという核武装する3つの国が領有権を争うカシミール地方の中にある紛争地ならではの苦労もあるという。