健全な雇用情勢維持に注力 緩和へ転換「時機到来」・米FRB議長 景気、大統領選に影響も〔深層探訪〕

AI要約

FRB議長パウエル氏がジャクソンホール会議で金融政策の利下げを表明し、雇用市場への配慮を強調。

景気減速を受けて金融緩和方針に転換し、9月の会合で利下げを開始する方針。

経済指標次第で利下げペースが変わる可能性あり。選挙でも経済が最大の争点に。

健全な雇用情勢維持に注力 緩和へ転換「時機到来」・米FRB議長 景気、大統領選に影響も〔深層探訪〕

 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日、西部ワイオミング州での年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演し、金融政策を利下げに転換する「時機が到来した」と表明した。9月の金融政策会合での利下げ開始と、健全な雇用情勢の維持に努める考えを明示した。11月の米大統領選でも経済は最大の争点の一つで、景気や雇用の動向はFRBの政策運営だけでなく、選挙の行方も左右しそうだ。

 ◇一段の減速歓迎せず

 「強い労働市場を支えるため、できることは何でもする」。パウエル氏は講演で、雇用への目配りを強調した。背景には、大幅利上げによるインフレの封じ込めがようやく視野に入ったことがある。パウエル氏は、2%の物価目標実現への「確信が増した」と述べた。

 インフレが落ち着く一方、好調だった雇用情勢には陰りが見え始めた。7月の失業率は4.3%と、「2023年初頭からほぼ1%上昇した」(パウエル氏)。同氏は「労働市場の一段の減速は歓迎しない」とも述べ、金融緩和への転換により、雇用の悪化を防ぐ意志を鮮明にした。

 景気重視ともとれるこうした発言を受け、市場ではFRBが9月会合以降、「合計2%の利下げを行う必要がある」(米金融大手)との見方も浮上。本格的に金融緩和局面入りするとの期待が高まった。

 ただ、ジャクソンホール会議に出席した米有力シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」のアダム・ポーゼン所長は、「労働市場は鈍化しているが、生産性向上や移民による労働力増加が原因」と分析。雇用が少な過ぎるために失業者が増えているのではないとし、米国の景気後退リスクは「それほど高くない」と強調した。

 ポーゼン氏は、「市場が織り込む来年、再来年の利下げ回数は多過ぎる。FRBも失望しているだろう」と語った。

 ◇経済が最大の争点に

 パウエル氏は利下げペースについて「経済指標や見通し、リスク次第だ」と説明した。9月6日に発表される8月の米雇用統計は、9月会合での利下げ幅や、その後の緩和テンポを占う手掛かりとなりそうだ。

 大統領選に関する各種世論調査では、有権者の最大の関心事は経済でほぼ一致。現在、民主党候補のハリス副大統領の支持率は共和党候補のトランプ前大統領を僅差でリードしている。しかし、米CBSテレビの最新調査によると、経済の観点なら、減税や規制緩和を掲げるトランプ氏を選ぶとの回答は56%で、ハリス氏(43%)を上回る。選挙戦が佳境に差し掛かる中、雇用情勢は一段と注目を集めそうだ。(ジャクソンホール時事)