汚染水放出1年、日本ではなく野党に「謝罪」要求した韓国大統領室

AI要約

福島原発汚染水の海洋投棄1周年を迎え、韓国政府が安全性を強調し野党と専門家らに批判される中、環境団体や国民の反対も根強い。

韓国政府は1年間の検査で放出された汚染水に何の問題もなかったと主張。一方、野党や専門家は長期の健康影響調査を求めるなど懸念を示している。

国民の大多数が日本産水産物の輸入禁止に賛成し、汚染水海洋投棄に反対する世論が強いことが明らかになった。

汚染水放出1年、日本ではなく野党に「謝罪」要求した韓国大統領室

 大統領室が、日本の福島原発汚染水の海洋投棄当時に韓国政府の生ぬるい対処を批判した野党に対して国民への謝罪を要求した。放出から1年が経過したが、何の問題も発生しなかったため、「懸念と批判は怪談であり偽りの扇動だったことを認め、国民の前で謝罪しなければならない」という主張だ。専門家らは、大統領室の認識こそ「無知と非科学的な確信に満ちている」と批判した。野党は「放出された汚染水が韓国の海に到着するのは、どれだけ早くても4~5年後のことだが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は5年後や10年後に時間旅行にでも行ってきたのか」と指摘した。

 大統領室のチョン・へジョン報道官はこの日、龍山(ヨンサン)の大統領室で会見を開き、「24日は野党が福島原発の『怪談』を放出して1年になる日」だとし、「(韓国政府は)過去1年間、国内の海域や公海などから試料を採取し、4万9600件あまりの検査を行った結果、安全基準から外れた事例は1件もなかった」と述べた。汚染水放出の無害さが1年間の各種検査で立証されたという主張だ。さらに、「野党のあきれた怪談扇動がなければ使わなくて済んだはずの予算1兆6000億ウォン(約1700億円)が、この過程に投入された」として、「野党が国民の分裂ではなく、民生のための政治をしたならば、社会的弱者のために使うことのできた血税」だと強調した。試料採取や海洋放射能監視の強化、漁業者の被害の支援費用などに使われた予算を「使わなくてもよかった費用」だと切り捨てたのだ。

 野党は「居直り」だと反発した。最大野党「共に民主党」のチョ・スンネ首席報道担当はこの日の書面会見で、「いったい何を根拠に、国民と野党の懸念を怪談だと貶めるのか。日本政府は今年2月からは放射能の資料も提供しておらず、日本の環境省の資料から、放出地点のトリチウム濃度が10倍に上昇したという事実が明らかになったが、韓国政府は最初から手をこまねいていた」と指摘した。さらに、「最終報告に何の責任も負わないと宣言した国際原子力機関(IAEA)の報告書の1つだけを信じて同意した汚染水放出は、少なくとも30年間続く」として、「尹錫悦政権は(日本政府が犯した)犯罪の共犯であり幇助犯」だと述べた。

 環境団体や専門家らも同様に大統領室の態度をいっせいに批判した。緑色連合は22日の声明で「中国と香港が汚染水投棄を懸念して自国の立場を代弁している反面、韓国政府は『1年間安全基準から外れた事例は1件もなかった』と問題を単純化している」とし、「放射線に『安全な基準』というものはなく、管理用に過ぎない『基準』を超えなかったという理由で、低線量放射線や放射線累積のリスクなどを排除している」と指摘した。政府が全国民を対象にした長期の追跡調査のための健康影響調査を行わないでいることについても「責任放棄」だと批判した。

 原発問題を研究してきた日本の松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)名誉教授は「長期的被害を調べなければならないのに、韓国政府は『1年間何の問題もなかった』として汚染水に関する懸念を怪談だといって切り捨てている。チェルノブイリ原発爆発当時にも即死した人は多くなかった」と指摘した。さらに「いま重要なのは、輸入水産物に対してストロンチウム89・90を測定した結果を必ず添付するよう日本政府に要求すること」だと述べた。ストロンチウムは体内に入ると骨に蓄積されやすく、骨髄がんと白血病の原因になりうる。

 環境運動連合はこの日、汚染水海洋投棄から1年を機に実施した国民世論調査で、回答者の65%が日本産水産物の輸入全面禁止に賛成し、汚染水海洋投棄に反対するという回答も76%に達したと明らかにした。調査は世論調査業者「リサーチビュー」が15日から19日までの4日間、全国の満18歳以上の成人男女1000人を対象に実施した。

チャン・ナレ記者、ユン・ヨンジョン記者、コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )