「インタビューは必ず現地語で」やる...中華料理を通じて世界中の華人たちの「アイデンティティ」を追いかける著者が取材方法にこだわる納得のワケ

AI要約

ノルウェーの小さな町やマダガスカル、モーリシャスなど世界のさまざまな場所で華人経営の中華料理店が見られる。本書では、その店舗のオーナーやコミュニティにスポットを当てて探求している。

作者のクワン氏はドキュメンタリーフィルムを撮影しながら世界中を旅し、訳者の斎藤氏と共に中華料理店と関わる人々と対談を続けている。

世界中を飛び回ったクワン氏は、華人の民族離散や店舗オーナーの事情について深く探求しており、中華料理店を通じて多様な文化を紹介している。

「インタビューは必ず現地語で」やる...中華料理を通じて世界中の華人たちの「アイデンティティ」を追いかける著者が取材方法にこだわる納得のワケ

北極圏にある人口8万人にも満たないノルウェーの小さな町、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国・マダガスカル、インド洋の小国・モーリシャス……。世界の果てまで行っても、華人経営の中華料理店はある。彼らはいつ、どのようにして、この土地にたどりつき、なぜ、どのような思いで中華料理店を開いたのか。そんな疑問を抱いて、世界に離散する華人の象徴とも言うべき中華料理店を訪ね歩き、一国一城の主や料理人、家族、地元の華人コミュニティの姿を丹念にあぶり出したのが、関卓中(チョック・クワン)著、斎藤栄一郎訳『地球上の中華料理店をめぐる冒険(原題:Have You Eaten Yet?)』だ。

旅をしながらドキュメンタリーフィルムを撮り、それを書籍化した著者のクワン氏。

1年の半分を海外で過ごしながら、翻訳家・ジャーナリストとして仕事をこなす訳者・斎藤氏。

旅と食と言葉をテーマに、著者と訳者の対談記事をお届けする。

『地球上の中華料理店をめぐる冒険』連載第24回

『著者が世界中の中華料理店をめぐるきっかけとなった華人たちの「困難」...日本人も他人事ではない「民族離散」の思いもよらない現状』より続く

クワン:世界に離散した民族としてはユダヤ人が真っ先に思い浮かびますが、私が世界を旅していて気づいたのは、華人、インド人も同様に世界中に離散しているということ。私は世界三大ディアスポラ(離散民族)と呼んでいます。そして華人の多くは、小さな店からレストランまで、中華料理店を開いているんです。

斎藤:確かに、世界のどこを旅しても中華料理店は必ずありますね。

クワン:だから中華料理店を入口にして、世界各地に暮らす華人の素顔や、食を始めとした文化を探ろうと考えました。

斎藤:アマゾンの奥地から北極圏まで、みんないろいろな事情でたどり着いて店を開いている。やむにやまれぬ事情で故郷から出ていかざるを得なかった人々もいるんですね。本書の主役である世界の華人は、まさにそうした存在です。文字どおり地球上のあちこちにいます。

クワン:5大陸15ヵ国で撮影しました。制作当時は、世界中を飛び回っていましたから、妻からは「いつもどこかに行っちゃって、ぜんぜん家にいないんだから」とよく責められたものです!