「日本も侍精神を忘れるな」 ロシアとの戦いに身投じたウクライナの映画監督センツォフ氏

AI要約

映画監督で志願兵のオレグ・センツォフ氏が、ロシアに侵略されたウクライナで露軍との戦いに参加。特別休暇中にインタビューで日本にも武器を持って立ち上がるよう訴えた。

センツォフ氏は映画制作から手を引いて戦場に赴き、偶然撮影した戦地の映像をドキュメンタリー作品として公開。戦争の実相を映し出しているとして発表した。

ウクライナ南部クリミア半島生まれのセンツォフ氏は、ロシアの半島併合に反対し逮捕され、刑務所でハンストを行い、釈放後にサハロフ賞を受賞。ウクライナの故郷を思い犠牲を払いながらも祖国のために戦っている。

「日本も侍精神を忘れるな」 ロシアとの戦いに身投じたウクライナの映画監督センツォフ氏

ロシアに侵略されたウクライナに、志願兵として露軍との戦いの最前線に身を投じた映画監督がいる。オレグ・センツォフ氏(48)。今年6月には戦地で偶然撮影していたビデオ映像をドキュメンタリー作品として公開した。特別休暇で首都キーウ(キエフ)を訪れた同氏は産経新聞とのインタビューに応じ、中露やロシア、北朝鮮の脅威に直面する日本も「国家存亡の危機に際しては、かつての侍の精神を思い出し、武器をとって立ち上がるべきだ」と訴えた。

■侵攻開始直後に志願

センツォフ氏は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始直後、ウクライナ軍傘下の義勇兵部隊「領土防衛隊」に志願し、キーウ攻防戦をはじめとする主要な戦いに参加。23年夏の南部ザポリージャ州でのウクライナ軍の反抗作戦では露軍の砲撃で顔や手足を負傷している。最近、少尉から中尉に昇進した。

11~21年に3本の劇映画の監督を務めた。だが、ロシアの侵攻開始を受けて一切の躊躇なく映画制作から手を引き、戦場に赴いた。「祖国と私の家族、そして私自身の生存がかかっているのだ。何ら驚くべきことではない」と語る。

新作が公開される運びとなったのは、身体装着型の小型ビデオカメラがたまたま作動していたのがきっかけだ。敵弾が頭上をかすめる中、塹壕に潜む兵士が疲労と緊張の中で会話する様子などを約18時間にわたって撮影していた映像のうち、90分を一切編集せずに切り出し、「リアル」の題名を付けて発表した。

「映像の存在に気付いたのは撮影から1カ月後だった。最初は映像を消去しようかと思ったが、知人らと相談し、発表することにした。戦争の実相を映し出していると思ったからだ」

■奪われた故郷へ強い思い

ウクライナ南部クリミア半島シンフェロポリ生まれのロシア系。だが、14年のロシアによる半島の一方的な併合に異を唱えて露当局に逮捕され、15年に反テロ法違反の罪で禁錮20年の判決を受けて収監された。

獄中ではハンストを展開し、18年に欧州議会から優れた人権活動家に贈られる「思想と自由のためのサハロフ賞」を受賞。19年にロシアとウクライナの間の捕虜交換で釈放された。