一月の宿泊費だけで4百万ウォン…それでも「大学入試成功」の欲望は大峙洞へ(1)

AI要約

韓国ソウルの大峙洞(カンナムグ・テチドン)で、夏休み中に地方から多くの子どもたちが予備校の特講を受けるためにホテルに長期滞在している。

予備校街では競争的な雰囲気の中、スター講師による現場講義を受ける子どもたちが集まり、高校入試に特化した学習を行っている。

宿泊費や授業料などの経済的負担は大きいが、地方の子どもたちの間で大峙洞での予備校生活が一種の定番となっており、自分の学力を高めるために訪れる子どもたちが急増している。

一月の宿泊費だけで4百万ウォン…それでも「大学入試成功」の欲望は大峙洞へ(1)

 今月8日夜9時40分、ソウル江南区大峙洞(カンナムグ・テチドン)の〇ホテルのロビー。Kさん(15)が左側に置いてあるコンピューターデスクで英語の問題に取り組んでいた。部屋に上がっていったり、食堂から出てきたりする浮かれた様子の宿泊客の間で静かに問題集を見つめるKさんの姿は異質だった。

 江原道春川市(チュンチョンシ)の中学3年生のKさんは夏休みの間、このホテルに泊まっている。母親と高3の姉と共にだ。ベッドが2つある3人部屋を借りて長期滞在して3週目だ。春川の家を置いての家族3人の「大峙洞でのホテル暮らし」は予備校に通うためだ。Kさんは午前9時ごろにホテルを出て大峙洞の英語・数学予備校で授業を受ける。午後3時ごろにホテルに戻って宿題をする。クォンさんの姉は朝8時から夜10時まで自習型総合予備校で勉強している。

 3週間のホテル宿泊費だけで200万ウォン(約22万円)以上かかる。Kさんの予備校の授業は1科目当たり35万~40万ウォン(約3万8500~4万4000円)ほど。宿泊費や授業料などを合わせると、Kさんの家族が3週間で使う金額は400万ウォン(約44万円)。にもかかわらず大峙洞のホテルに滞在する理由は明確だ。

 「来てみたら、私より2歳年下の子が同じことを勉強していました。先行学習をしないと、高校に入って上位圏に絶対入れないだろうと思って、有名な先生とできる子たちの多いこの場所に学びに来ました。夏休み中に英語は高2課程、数学は高1課程まで終わらせるのが目標です」

 長期休みを大峙洞のホテルで過ごすのは、Kさんの家族だけではない。「男子か女子かを問わず、このホテルにはたくさんの人が泊まっています。エレベーターでもよく会います。もともとはツールームを借りようと思って不動産屋に行ったんですが、このホテルをすすめられました。うちの子の友達で、学校で『トップ』を取っている子がここの10階に泊まっているんですが、高1の時から長期休みのたびにここに来ていたと言っていました」。Kさんの母親は9日朝、娘と共に取材に応じ、ここでは家を出てきた「大峙洞留学生」をよく見かけると耳打ちした。

「3カ月前から長期滞在を予約」

 長期休み中、全国各地の子どもたちがホテルの長期宿泊やワンルームでの生活も辞さず、大峙洞で予備校の長期休み特講を受ける。政府はいわゆる「私教育(塾、予備校、習い事。公教育と対をなす概念)カルテル」に対する大々的な取り締まりに乗り出すとともに、「キラー問題」排除政策を展開したが、私教育熱はまったく収まっていない。むしろ予備校の授業料に住居費、宿泊費、食費まで払って予備校街へと集まってきている。

 大峙洞の予備校街には「大学入試の成功」という一つの目標を持つ小中高生と浪人が集まる。特に長期休みになると「サマースクール」、「ウィンタースクール」と呼ばれる特講を受けるため、地方の子どもたちまでもが集まってくる。8日夜に訪ねた大峙洞の予備校街は、本の入ったリュックを背負ってジャージとサンダル姿で歩き回る子どもたちで混雑していた。学習誌を片手に予備校の中に入っていったり、歩きながらハンバーガーを食べたりしている子もいる。地方から上京した「大峙洞留学生」の一日も、ここを歩く普通の子どもたちの一日と違いはない。子どもたちは国語、数学、英語、社会、理科などの科目ごとに行きたい予備校に登録し、毎時間各予備校を転々とする。空いた時間には「スタディーカフェ」で宿題をしたり、食事を済ませたりする。彼らが一日を終えて帰るところは家ではなく、近くのホテルやワンルーム、寮などだ。

 慣れない土地での生活であるうえ、経済的負担も大きいが、需要は安定している。大峙洞のそばにある不動産屋には、地方から上京してきた子どもと保護者が常に訪ねてくる。大峙洞のD不動産の公認仲介士、Cさんは、「主に長期休みの特講を受けるために、上位圏の中高生が訪ねてくる。毎月家賃で120万~150万ウォン(約13万2000~16万5000円)ほど払わなければならず、新築は180万ウォン(約19万8000円)のところもある。それでも早い人は3カ月前から来て予約している」と話した。別の不動産関係者も、「ここで適当な部屋が見つからず周辺のホテルに行く人もいれば、逆にホテルは高すぎると言って部屋を探してほしいと言う人もいる。全国から来ていると考えてくれればよい」と話した。大峙洞の予備校街から歩いて15分の場所にある〇ホテルの関係者は、「長期休み前に子どもと保護者が長期宿泊を予約するケースがある」と語った。同ホテルの宿泊費は1カ月で400万ウォン前後だ。

 大峙洞が地方の子どもたちまで吸い込む理由としては、入試に特化した予備校が多いこと、「スター講師」の現場講義、競争的な雰囲気の中で自らをむち打てること、などがあげられる。ソウル西大門区(ソデムング)に住むLさん(52)の妻と高3、中3の子どもも、今年の夏休みは大峙洞のSホテルで過ごしている。宿泊費だけでも月400万ウォン以上かかる。Lさんは「どうにかして受験生たちを分けなければならない状況にあっては、学校が教えていない問題が試験に出てくる。大峙洞の予備校は、それを解く方法を子どもたちに教えてくれる。スター講師の現場講義を受けたら集中力を引き上げることもできるという。上位圏の大学に入りたいという意欲を持っている子たちは、ここに来ざるを得ない状況」だと語った。長期休みのたびに大峙洞の祖母の家で過ごす大田(テジョン)の高校1年生は、「ここでは子ども同士の競争がとても激しく、中学生の時から高校の数学をやる雰囲気。今は全校で10位ほどだが、ここに来ると真ん中くらいにしかならないと思う。ここで自分がどのくらいの位置にいるのか確認すると刺激されて、もっと勉強を頑張るようになる」と話した。(2に続く)

キム・ミンジェ、パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )