文在寅前大統領回顧録と平山村の「不思議なネコ」【コラム】

AI要約

文在寅前大統領の回顧録は、幻想的な世界観を描いている。北朝鮮のミサイル発射にも関わらず、金正恩を平和主義者として描写している。

文前大統領は金正恩を礼儀正しく評価しており、ミサイル発射に関しても肯定的な姿勢を示している。

文前大統領はネコを使ってソーシャルメディアの問題を隠そうとしており、政敵を攻撃するコメントに「いいね」を押す理由も説明できない。

文在寅前大統領回顧録と平山村の「不思議なネコ」【コラム】

 話題沸騰、ヒットに成功した文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の回顧録の主題は、次の一文に要約され得る。「現実を抜け出した幻想の中の世界観」。本の出版日が、よりにもよって北朝鮮が東海に短距離弾道ミサイルを撃った日だった。射程300-1000キロなので対南打撃用であることは明らかだったが、回顧録は金正恩(キム・ジョンウン)について「核を使用する考えはない」と語ったと伝えた。金正恩が「核武力を動員した南朝鮮全領土平定」うんぬんと言っているにもかかわらず、文・前大統領は金正恩を「延坪島砲撃について申し訳ないと言う平和主義者」であるかのように描写した。

 文・前大統領は、金正恩が「丁寧だった」と評した。叔父を銃殺し、兄を毒殺した独裁者を「礼儀正しく、尊重を身に付けていた」と記した。文・前大統領は「娘の世代まで核を頭に載せて生きるようにはさせたくない」という金正恩の言葉は本心だったと書いたが、その金正恩が、ミサイル発射のたびに娘を連れてきているニュースは見ていないようだった。金正恩がトランプに親書を送って「文在寅排除」を要求した事実が明らかになったにもかかわらず「米朝がわれわれの仲裁の努力を受け入れた」と書いた。事実とは懸け離れた主張に、一体どの星で生きているのかと思った。

 現実と非現実を行き来する回顧録を読んでいて、平山村の私邸で飼われている「おかしな」ネコのことを思い出した。先の総選挙のとき、文・前大統領が李俊錫(イ・ジュンソク)改革新党代表を中傷するソーシャルメディアの書き込みに「いいね」を押し、人々の間でうわさになった。論争が大きくなると、釈明の過程で登場したのが問題のネコだった。聯合ニュースによると、文・前大統領側の関係者は「単純なミスでもあり得るし、愛猫が(タブレットの)近くで遊んでいてそうなったこともあり得る」と語ったという。説明に窮して、罪もないネコを引っ張り出したのだった。

 平山村のネコが召喚されたのは、一度や二度ではない。2022年の退任直後にも、文・前大統領は李在明(イ・ジェミョン)代表を「ごみ」とののしるコメントに「いいね」を押して取り消した。少し後に文・前大統領は「ついに犯人を摘発」と題して愛猫の写真をアップロードし、ネコの仕業だったと主張した。その後も、李代表の「北朝鮮仮想通貨疑惑」記事、李代表を「サイコパス」と表現したコメントに「いいね」を押すことが続いた。繰り返される「李在明たたき」で推測が盛んに行われるようになると、親文の金南局(キム・ナムグク)議員が乗り出して「単純ミスや、愛猫のやったこと」と釈明した。しかし、そのネコがどういうわけで政敵を攻撃するコメントばかり選び出すのかは説明できなかった。