「厚かましいにもほどがある」サムスンとLVMH パリ五輪のスポンサー企業の露出は「やり過ぎ」だった

AI要約

フランスの高級ブランドグループ「LVMH」は、パリ五輪のスポンサーとして大胆な要求をし、IOCによって容認された。

LVMHのブランドは開会式や競技場で際立つように露出され、これまでにないスポンサーシップの形が見られた。

開会式でのLVMHの露出のレベルには驚きの声が上がり、今後の五輪におけるスポンサーの露出について検討が求められている。

「厚かましいにもほどがある」サムスンとLVMH パリ五輪のスポンサー企業の露出は「やり過ぎ」だった

フランスの高級ブランドグループ「LVMH」は、パリ五輪のスポンサーとして約1億7500万ドル(約259億円)を拠出すると決めたとき、大会組織委員会に相当な見返りを求めた。それまでの五輪で、どの協賛企業も要求したことのないレベルの要求だ。

だが、その資金が欲しくてたまらかった組織委員会は、ことごとく「イエス」と答えたようだ。

メダルは「ショーメ」が手がけ、フランス代表チームの開会式ユニフォームは「ベルルッティ」が担当。表彰式でメダルをのせて運ぶトレーには「ルイ・ヴィトン」の市松模様が、はっきりと見てとれた。いずれもLVMH傘下のブランドだ。

それだけではない。開会式でセーヌ川をクルーズしながら入場してきた選手たちの船には、ルイ・ヴィトンのスーツケースやトランクが積まれていた。さらに、そうしたルイ・ヴィトンのかばんを製造する工程を捉えた映像も世界へ向けて放映された。

五輪で最も注目される場面の一つである開会式で、3分間のコマーシャルを流すとは! この恐れを知らない広告に、国際オリンピック委員会(IOC)の古参幹部らは開いた口が塞がらず、五輪との付き合いがLVMHよりも長いパートナー企業は憤慨した。

「開会式でのLVMHのブランド露出のレベルには驚愕しました。これは普通では考えられません」と、コカ・コーラで五輪やワールドカップなどを担当していた元副社長のリカルド・フォートは言う。

このような大胆な露出は、今後の五輪において強力なスポンサーの常とう手段になるのだろうか?

コカ・コーラと同じくIOCの長年のパートナーであるパナソニックで、五輪マーケティング責任者を務める小杉卓は、「難しい質問ですね」と前置きし、慎重に言葉を選びながら話しはじめた。

小杉はまず、競技がおこなわれる場でのスポンサーの露出度に関して、五輪の方針が他の主要なスポーツイベントとは異なっていることを指摘した。いわく、開会式を含む五輪の競技場は「クリーン」であるべきであり、サッカーやラグビーのワールドカップにはつきもののブランディングは禁じられているという。

その原則にもかかわらず、「一度そのようなこと(LVMHがやったこと)をすれば、他のスポーツイベントと変わらないものになるかもしれませんね」と小杉は言う。

パナソニックには開会式に不満を抱く相当の理由があった。DJがパフォーマンスを披露したシーンで使われていたミキサーが、ライバル企業のものだったのだ。しかも、そのロゴがはっきりと映し出されていた。激怒したパナソニックはすぐさまIOCに苦情を申し立てた(小杉はこの件についてはコメントを控えた)。

匿名を条件に取材に応じたIOCの幹部2人は、LVMHの開会式コマーシャルがどれほど長くて厚かましいものかを事前に知っていれば、その部分をカットさせただろうと語った。

一方、IOCの広報は「私たちはその内容を知っていました」と述べた。ただし、IOCの上層部も知っていたかどうかについては明らかにしなかった。