揺れるイギリス 極右暴動に対抗し左派が大規模デモ「移民歓迎」

AI要約

英国で極右主義者らの排斥デモへの対抗デモが続く中、数万人規模の反極右デモが各地で行われた。

事件のきっかけとなった殺人容疑者の出自に関する偽情報がSNS上で拡散し、移民や難民に対する排斥感情が高まった。

極右団体やインフルエンサーの影響力、イーロン・マスク氏の投稿などが暴動を助長し、政府は警戒態勢を強化する一方で、地元住民やリベラル系団体が反極右デモを行い、相互尊重の重要性が訴えられている。

揺れるイギリス 極右暴動に対抗し左派が大規模デモ「移民歓迎」

 移民排斥を訴える極右主義者らの暴動が続く英国で、極右や人種差別に反対する「対抗デモ」が10日、各地で実施された。英メディアによると、こうしたデモは7日以降、4日連続で行われ、参加者はいずれも極右側の規模を上回ったという。スターマー首相は9日、警察当局に対し「厳戒態勢の維持」を要請した。

 「難民や移民は大歓迎だ」。英BBC放送によると、北部スコットランドのエディンバラでは10日、議会の建物付近に集まった数百人が口々にそう声を上げた。首都ロンドンでも約5000人が「反極右」デモに参加。英全土では10日だけで、数万人規模の同様のデモが行われた。

 暴動のきっかけは、7月29日に英中部サウスポートで6~9歳の女児3人が殺害された事件だ。殺人容疑などで逮捕された17歳の少年の両親がアフリカ中部ルワンダ出身と報じられると、SNS(ネット交流サービス)上では「容疑者はイスラム過激派」「不法移民だ」といった偽情報が拡散した。

 これを受け、各地で「移民は出て行け」などと訴えるデモや暴動が発生。モスク(イスラム教礼拝所)や難民認定申請者らが滞在するホテルも放火され、これまでに700人以上が逮捕された。

 こうした極右側の動きに対し、各地の地元住民やリベラル系団体も「反極右」デモで対抗し始めた。英政府も警官を大量動員し、暴動鎮圧を進めている。

 BBCの分析によると、今回の暴動はSNSに影響力を持つインフルエンサーらが中心的役割を果たしたという。特に極右団体「イングランド防衛同盟」の創設者トミー・ロビンソン(本名スティーブン・ヤクスリーレノン)氏は、滞在先のキプロスから100万人近いX(ツイッター)のフォロワーに対し、暴動をあおるメッセージを投稿した。

 さらに状況を「かき回した」(ロイター通信)とされるのが、Xを運営する米実業家イーロン・マスク氏だ。暴動が激化する中、Xに「(英国での)内戦は避けられない」と投稿したため、スターマー首相の報道官が「(投稿内容は)正当化できない」と不快感をあらわにする一幕もあった。

 チャールズ国王は9日、スターマー首相や警察トップと電話し、暴動が起きた地域で活動する警官や救急隊員らへの謝意を伝え、英国民の「相互尊重と理解」の重要性を強調した。

 英国では不法移民への反発が根強く、7月4日投開票の総選挙でも移民対策が争点の一つになった。【ロンドン篠田航一】