東南アジアから消えゆく野生のトラ、タイの保護活動に希望

AI要約

タイ西部の広大な森林地帯で、トラの個体数が深刻な絶滅の危機から回復していることが確認された。

トラの個体数回復は、トラだけでなく絶滅危惧種の偶蹄類も影響を受け、森林管理の効率化と長年の保護活動の成果として認められている。

西部森林地帯では多くの絶滅の恐れのある生物が生息し、繁殖のために必要な広範な生息地を提供することで、トラと他の多くの種の保護につながっている。

東南アジアから消えゆく野生のトラ、タイの保護活動に希望

(CNN) タイ西部の広大な森林地帯で、深刻な絶滅の危機に瀕しているトラの個体数が回復している。

トラの個体数回復が確認された西部森林地帯(WEFCOM)は、11の国立公園と6の自然保護区をまたいで1万8000平方キロメートルの森林が連なる。同地帯に生息するトラの個体数は、2007年~23年の間に推定41頭から143頭へと3倍以上に増加した。

この調査結果は7月29日の「世界トラの日」に合わせ、タイ国立公園局と野生生物保護団体WCSの共同研究チームが科学誌「グローバル・エコロジー&コンサベーション」の電子版に発表した。

個体数の回復はトラだけにとどまらない。併せて発表された調査結果によると、この森林では絶滅危惧種の偶蹄類(ぐうているい)(トラが獲物としている鹿や野牛などひづめのある哺乳類)の個体数も倍増していることが分かった。

個体数の増加は森林管理の効率化を反映しており、10年以上に及ぶ保護活動の成果だと、調査にかかわったWCSの専門家ポーンカモル・ジョーンブロム氏は指摘する。

「この森林地帯には絶滅危惧種が多数生息している」とジョーンブロム氏は語り、同地帯が「野生生物保護と個体数回復のモデル」になれることを望むと語った。

05年から西部森林地帯の保護プロジェクトにかかわってきたジョーンブロム氏は、状況の劇的な変化目の当たりにしてきたという。

野生生物を脅かす最大級の驚異は密猟であり、対抗するにはパトロールが最も有効とされる。しかし05年の時点ではパトロールの数が限られ、組織化もされていなかった。レンジャーは口頭で管理職に報告していたらしく、データの収集も記録も行われていなかったという。

西部森林地帯はトラだけでなく、アジアゾウやサイチョウ、牛の仲間のバンテンなど絶滅の恐れがある生物の宝庫でもある。種の多様性にも富み、哺乳類150種、鳥類490種、爬虫類(はちゅうるい)90種が生息する。

トラの保護活動は小さな孤立した区域で行われることが多い。しかし西部森林地帯では複数の国立公園や保護区が、広範な範囲をまたぐ森林回廊で結ばれている。繁殖のために300平方キロもの生息地を必要とするトラにとって、これは不可欠だ。

パトロール隊はGPSで正確な場所を特定し、標準化された書式を使って収集したデータをパトロールルートの決定や野生生物の分布の把握、違法行為の現場特定に役立てている。

07年には自動撮影カメラを設置してデータを収集し、三つの主要保護区をまたぐ個体数の把握に利用できるようにした。個々のトラは、人間の指紋に似たそれぞれ固有のしま模様で識別できる。

トラの個体数が3.5倍になり、バンテンや鹿の仲間のサンバーが2倍に増えたのは、パトロールの強化が奏功している証しだとジョーンブロム氏は言い、「トラの保護は、獲物だけでなく生息地も含めて他の多くの種の保護につながっている」と指摘した。