「最後の野生ウマ」ってホント? 謎多きプシバルスキーウマ(モウコノウマ)とは

AI要約

プシバルスキーウマは数千年前にユーラシアの草原で生息していたが、乱獲や厳冬の影響で絶滅の危機に瀕し、現在でも保護活動が続いている。

野生では家族やハーレムと呼ばれる群れを形成し、深い絆で結ばれて行動する。繁殖は妊娠期間11~12カ月で行われ、子馬を出産する。

オスは支配的なハーレムを持ち、メスや子ウマと共に行動するが、繁殖可能な若いオスは独身だけの群れを形成し、ハーレムを目指す。

「最後の野生ウマ」ってホント? 謎多きプシバルスキーウマ(モウコノウマ)とは

 数千年前、タヒと呼ばれるウマがユーラシアの草原で草をはんでいた。1800年代後半、ロシアの探検家ニコライ・プシバルスキーがこのウマの骨を記述し、以来、プシバルスキーウマが正式名称となった。

 それから100年もたたないうちに、厳冬や在来種との交配、乱獲が原因で、プシバルスキーウマは野生で絶滅してしまった。野生で最後に目撃されたのは1960年代後半だ。その後、飼育下で繁殖を行い、かつての生息地に再導入されたが、依然として絶滅の危機にある。

 野生で生息していた頃は、モンゴル西部から中国北部の大草原や低木地で草などの植物をエサにしていた。野生に戻された群れを観察すると、仲間とのきずながとても深い動物であることが分かる。若いメスだけの群れがある一方、母ウマと子ウマの群れはボスである1頭のオスとともに家族で行動する。妊娠期間は11~12カ月で、1頭の子馬を出産する。

 プシバルスキーウマの保護活動が盛んな理由の一つは、最後の野生ウマと考えられてきたからだ。しかし、2018年の研究で、野生に戻った家畜ウマの子孫で、再野生化したウマだと示唆された。ところが2021年の研究では、その元になったウマが実は家畜化されてはいなかったという話になった。つまり、ずっと野生のまま1960年代後半まで生き続けていたことになる。

 いずれにせよ、プシバルスキーウマはウマ科の遺伝的多様性を高めている。がっしりしたキャラメル色のこのウマは約2000頭しか現存しておらず、数を増やす取り組みが続けられている。

 ウマは単独行動の動物ではないが、プシバルスキーウマも例外ではない。ハーレムと呼ばれる群れを形成し、通常、群れを守る支配的なオスと数頭のメス、その子どもから成る。子どもは通常、繁殖可能な1~4歳ごろにハーレムを離れる。ただし、生まれ育った群れを離れても、単独で生活することはほとんどない。通常、メスはほかのハーレムに加わり、オスはほかの若いオスと独身だけの群れを形成する。

 オスは自分のハーレムを持つまで、独身の群れで暮らす。独身の群れが大きくなると、小さな群れに分かれることもある。独身の群れは孤立しているわけではなく、ハーレムのオスはしばしば、外部のオスを撃退する。2023年の報告によれば、ハーレムのオスが独身の群れと遊ぶこともあるようだ。ただし、このような行動は珍しく、ハーレム内での遊びの方が数多く記録されている。

 メスは約11カ月の妊娠期間を経て、1頭の子ウマを出産する。子ウマは生まれてすぐ、成獣と同じように走っていななき、1カ月後には、同じハーレムの子ウマと遊び始める。

 孤立したハーレムが維持されることもあれば、複数のハーレムが集合し、ハーレムの群れが形成されることもある。2023年の研究で、1つのハーレムをドローンで監視したところ、兄弟関係がハーレムの仲の良さに一役買っている可能性が明らかになった。