【文化中国】中国・北京の古い民家の屋上が新しいリゾートに変身

AI要約

北京には歴史ある古都としてだけでなく、古い建築様式の民家である「胡同」がある。

胡同の屋上にはカフェやバーがあり、北京の中心部でリラックスできる場所として人気を集めている。

胡同の改修により、新しいビジネスと住民の生活を融合させつつ、北京の歴史と文化を守る取り組みが行われている。

【文化中国】中国・北京の古い民家の屋上が新しいリゾートに変身

【CNS】3000年の歴史があり、また王朝の都として800年の歴史を持つ古都「北京」には、高層ビルや幅広い道路だけでなく、歴史を旅することができる旧市街に密集した古い建築様式の民家「胡同(Hutong)」もある。それらは北京の中軸線に沿って点在し、あたかも旧市街の「血管」のようだ。

「古民家の屋根で過ごすのはとてもリラックスできて気持ちが良いです」、 初夏の風が頬をなでる胡同の屋上のカフェで、コーヒーを楽しむ女性・馬(Ma)さんはこう話す。

「三天不打、上房掲瓦」(直訳:3日叩かないと、子どもが屋根に登って瓦をはがす)とは北京のことわざで、わんぱくで言うことを聞かない子供を表現する時に使う。

 胡同の屋根の上で遊んだり、鳩笛の音色を聞いたり、飛行機を見たり、ナツメを木から叩き落したり、これらは胡同に住んでいた古い世代の北京人の共通の思い出でなのだ。

 今日の北京人にとって、「屋根に上って瓦をはがす」ということわざは、さらに豊かな意味を持つようになった。

 北京の中心部に位置する「什刹海(Shishahai)」は、旧市街で最も風情がある場所の一つだ。先ほどの馬さんがのんびり過ごしていたのは「自由地露営(自由なキャンプ場)」というカフェバーだ。

 この店は「什刹海」に隣接する胡同の屋上にあり、「都市のキャンプ場」をテーマに、カフェレストランとパブを一体化した形態で多角的な営業をしている。通常のドリンクや軽食のほか、季節によって様々なサービスを提供する。春にはドレスアップして写真撮影、夏には野外映画鑑賞、秋には季節のスイーツ、冬には暖炉を囲んでお茶を楽しむなど、季節の特色を活かした趣向で人気の店だ。

 この店の屋上から周囲を見渡せば、「什刹海」のキラキラとした湖面が目に入り、さらに遠くには、北京の中軸線に位置する鐘楼(Zhonglou)と鼓楼(Gulou)が眺望できる。

 数学の教師である馬さんは「ここは他の店よりも開放的な眺めで自然に近く、仕事帰りにちょっと立ち寄ると心が癒されます。ストレス解消になり、北京の街の様子を特別な視野から眺めることもできます。店の多彩なサービスも体験感覚を高めてくれて、お気に入りの店です」と話す。

 20世紀80年代以降、北京は「胡同」の修復と保護に着手し、2017年以降は、中軸線の保護を契機として、徐々に古い市街地の改修をさらに拡大してきた。

 革新的な改修方法を採用し、伝統的な建築物を維持しながら、都市更新の新しいモデルを模索してきた。昔は住民たち共同の生活ペースだった「大雑院(胡同の大きな中庭)」は、温泉ホテル、有機菜園、ベーカリーなどに変貌し、胡同の屋上もまたさまざまな用途に利用されている。

 カフェバー「自由地露営」の責任者・宋雪蓮(Song Xuelian)さんの話では、「什刹海」周辺だけでも胡同の屋上に4、5軒の店がある。それぞれ特徴があり、自然の景観で有名な店もあれば、料理や酒で有名な店もあり、そのほとんどが地元市民や観光客に歓迎されているという。春節(旧正月、Lunar New Year)などの伝統的な祭日の時期には、そのほとんどが満席となるそうだ。

 ちなみに、中国外交部の汪文斌(Wang Wenbin)報道官は「胡同の屋上の新年の風情」と題した写真をSNSに投稿している。

「自由地露営」の隣には「什刹海景観区」と歩行者天国があり、この店はお客にとって街の喧騒の中で静かに休める場所となっている。

 また、例えば中軸線の北側地区の胡同の奥にある「自如空間(自由な空間)」のように、胡同のさらに奥まった静かな場所には、ブックカフェ、集会室、茶館、光と影のアート空間など様々なジャンルの施設が存在する。

 ちなみに「自如空間」の屋上テラスには、「胡同は静かな場所です。騒がず小声で話しましょう」という看板が出されている。

 昔からの北京の住人・趙(Zhao)さんは「今の胡同は以前とは違っています。昔の大雑院はとてもにぎやかで、騒々しくさえありました。改修後の今では、市井のにぎやかさにあふれていたかつての胡同の一部は、現代的で商業的な方向へと変貌を遂げました。私たちもまた新しい生活に適応しています」と、胡同の変化を語る。

 次々にやってくる地元客と観光客で、胡同には人の流れが戻って来たが、同時に潜在的な危険もはらみ始めた。多くの店が胡同の屋根の瓦の横に防護柵を設置し、瓦に登ったり踏んだりすることを禁止する安全標識や注意書きを掲げている。あるカフェの責任者によれば、こうした対策は安全上の理由であると同時に、胡同を保護するためでもあり、歴史的・文化的建造物である古い建物が破壊されないためでもあるという。

 業界アナリストは「都市の更新は長期にわたるダイナミックなプロセスであり、歴史的・文化的な文物の保存と社会経済的な発展のバランスをうまくとる必要がある」と強調する。

 昨今の文化観光ブームによってもたらされた胡同の「屋根に登って瓦をはがす」ような新しい利用方法は、人びとに古い北京への郷愁を感じさせることができている。

 ただし、歴史ある北京の中軸線の新たな再生の過程で、「胡同」の改築については、新しいビジネスと住民の生活とのより良い融合を図るため、地元の状況に繊細な注意を払っていかなければならない。(c)CNS/JCM/AFPBB News

※この記事は、CNS(China News Service)のニュースをJCMが日本語訳したものです。CNSは1952年に設立された中華人民共和国の国営通信社です。